
仮想通貨投資は、急激な価格上昇によって大きな利益を上げる人が続出して話題になりました。
ところがその後一転して価格が下落し、逆に大きな損失を出す人が増えた経緯があります。
このことから「仮想通貨はギャンブル」という印象を持つ人も多くなり、リスクを指摘する声も挙がりました。
一方で、投資として大きな魅力があり、継続して取り組んでいる人も多くいます。
仮想通貨は投資であることに間違いはありませんが、法定通貨の市場とは異なった要素があります。
これをしっかり理解することが重要なのです。
投資とギャンブルの違い
投資とギャンブルは異なりますが、その違いについて必ずしも明確な理解が行き届いているわけではありません。
どちらもお金を投入することで利益を出そうとするものであり、得をすることもあれば、損をすることがある点も同じです。
そのため投資とギャンブルを同一線上で捉える人もいますが、実際は違う種類のものです。
最も大きな違いは、投資は上手に運用すれば利益を上げることが可能であるのに対して、
ギャンブルは運任せの要素が強く、継続的に勝ち続ける可能性が極めて低い点です。
投資とはそもそも何か?
投資とは、事業に対して資本を提供することを意味します。
具体的には、企業活動に資金を出すことでその企業が利益を上げれば、投資家は配当という形の利益を得ることができます。
企業が収益を出し、その結果投資家も儲かり、ひいては社会全体が潤うという好循環になります。
もちろん企業活動ですから、必ずしも利益が上がるとは限りません。
経営が思うように展開せず損失を出し、結果として投資家も提供した資金が目減りする可能性もあります。
しかし、企業が発展することによって、全てに利益をもたらす可能性があるのが投資の特徴です。
また、投資の定義は以下のように定められています。
投資とは、目の前でお金を投じることで将来それ以上の利益になって返ってくるのを期待する行為のこと。主には「設備投資」「人材投資」など企業において使われることが多い言葉です。ただし、広い意味では投機やギャンブルに近い行為を含む場合もあります。
また「自己投資」など、必ずしも直接お金に関係しない行為に対して使われることも投資になります。もちろん自分の能力が上がれば収入も上がる可能性は高くなりますが、能力を上げることそのものに重点を置いたり、美容やファッションなど見た目をよくする行為にも使われることがあります。
ギャンブルとはそもそも何か?
ギャンブルには、必ず「胴元」と呼ばれる運営者が存在します。
運営者は、ギャンブルに参加する人からお金を徴収し、その中から運営にかかる費用を差し引いた上で参加者に利益を還元します。
つまり、集めた総額よりも、配当する総額の方が必ず小さくなる仕組みです。
これは胴元が利益を得て、参加者は全体として損をすることになります。
競馬、競輪、競艇など、たまたま賭けが当たって利益を得る人もいますが、それは全体のごく一部であり、大多数は損をしています。
また一時的に成功した参加者も、運任せである以上は繰り返し行うことで損失の方が上回ります。
結局は、参加者ではなく、胴元が儲かるシステムになっているのがギャンブルです。
仮想通貨がギャンブルと言われている理由
仮想通貨にギャンブル性があると言われる理由には、様々なものがあります。
いずれも、法定通貨より歴史の浅い仮想通貨市場の未成熟な面が影響していると考えられます。
4つの視点から理由を述べてみましょう。
値動きの幅が大きい
仮想通貨を特徴づける点として、値動きの幅が非常に大きいことが挙げられます。
仮想通貨は、法定通貨のような国や中央銀行の裏付けがありません。
そのことも、不安定要素につながっていると考えられます。
短期間に大きな価格変動が起こるため、一気に資金が目減りする可能性があります。
もちろん逆に、急激に資金が増える可能性もあるため、この点でギャンブル性があると考えられる理由になっています。
独特の値動きが特徴
価格変動の幅が大きいことと共に、独特の値動きをすることも仮想通貨市場のギャンブル性に影響を与えています。
世界の経済に影響を与えるニュースがあった場合など、ドルや円の法定通貨でも急激に価格が変動することがあります。
しかし、仮想通貨市場の場合は、あまり根拠のない噂話やちょっとした出来事で価格が急に変動することがあり、予想しづらい市場になっています。
その理由としては、法定通貨の市場に比べて、仮想通貨市場に参入している人の数が少ない点が考えられます。
市場参加者が限られているため、大口投資家の売買によって価格変動が起こりやすく、法定通貨ではそこまで影響を及ばさない額であっても、仮想通貨市場では価格に影響を与えてしまうことがあります。
レバレッジ取引ができる
法定通貨の市場では、為替差益によって利益を出すFXという金融取引があります。
FXはレバレッジをかけることで、証拠金の何倍もの額を取引することが可能です。
少ない資金でも大きな利益を出すことが可能ですが、その逆として短時間で多くの金額を失う可能性もあります。
このことから、FXは投資よりもギャンブルに近いと言われることがあります。
仮想通貨投資でも、FXのようにレバレッジをかけた取引が可能です。
通常でも値動きの激しい仮想通貨において、レバレッジをかけることでさらにリスクが増大する可能性があります。
こういった特徴が、仮想通貨にギャンブル性を感じさせる要因になっています。
とはいえ、仮想通貨はボラリティリティが高いことから国内取引所に限り、レバレッジ4倍までしか設定できないようになります。
日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)は、仮想通貨のレバレッジ取引について、証拠金の4倍を上限とする自主規制ルールを定める方向で調整に入ったことが、24日分かった。時事通信が同日伝えた。
投資家保護のため、これまで無制限だった証拠金取引に上限を設定する。月内にも同協会に参加する交換業者16社の合意を得て決定する見通し。
引用:コインテレグラフ
市場の信頼性が十分に確保されていない
仮想通貨市場は比較的新しい市場であり、歴史のある法定通貨の市場に比べてまだ信頼性が不十分な状態です。
仮想通貨は電子データであり、現物としての通貨の存在がないことも特徴的な点です。
仮想通貨取引所に対するハッキングや、経済犯罪などに利用される懸念が十分に払拭されているとは言えません。
信頼性の不十分さが、何が起こるかわからないという恐怖心をもたらすことに繋がり、結果としてギャンブル性の高い市場と判断される場合があります。
ウォーレン・バフェット氏が仮想通貨を『ギャンブルの道具』として批判を続けている
投資の世界的な権威であるウォーレン・バフェット氏は、仮想通貨に対して批判的な発言をしています。
「仮想通貨取引を行うプロトレーダーにはただただ吐き気がする。
これは誰かが糞の取引を始め、自身も取り残されないようにそれに続くというようなものだ」
引用:コインテレグラフ
バフェット氏は、仮想通貨投資を続ければ大金を失うことになるという警告を発し、仮想通貨市場を蜃気楼のようだと揶揄しています。
このような発言をする背景には、仮想通貨は何も生み出さず、後から購入した人がより高い値段を払うことを願うようになっているというバフェット氏の認識があります。
その一方で、仮想通貨を擁護する専門家の中には、バフェット氏は仮想通貨の持つ革新的なイノベーションを十分に理解していないという声を上げる人もいます。
バフェット氏は、仮想通貨の根幹システムであるブロックチェーンについては評価する発言をしています。
しかし、その本来的な意義について、仮想通貨を評価する専門家と意見のギャップがあり、仮想通貨批判につながっているものと考えられます。
仮想通貨投資をする上でのリスク
仮想通貨は値動きが激しいため、短期売買では値動きに翻弄されて損失を繰り返すリスクがあります。
レバレッジ取引の場合は、実際の証拠金よりも大きな額を取引しているため、そのリスクは増大します。
レバレッジ取引では先に売却からスタートすることもでき、価格が下落している時でも利益を出すことは可能ですが、逆にそのことが損失を短期間で取り返そうとする意識を強くし、余計な取引を繰り返してしまう場合もあります。
また、仮想通貨を保有してそのまま保持する中長期取引に関してもリスクはあります。
一時的に価格が下落しても、全体として価格が上昇傾向にあれば中長期取引で利益を出すことができます。
しかし市場全体が下落傾向にある場合は、ロスカットしないと損失が拡大していく可能性があります。
初心者が仮想通貨投資を始める際の注意点
初心者が仮想通貨取引を始める上において、注意しておきたいポイントがあります。
ポイントを守ることで、リスクを抑え、可能な限り安全な取引を実現することもできます。
3つの視点から考えてみましょう。
各仮想通貨取引所の手数料を理解する
仮想通貨投資の初心者は、利用する仮想通貨取引所の特徴をよく理解しておくことが大切です。
仮想通貨取引所によって、手数料に違いがあるからです。
スプレッドと呼ばれる売値と買値の差が実質的な手数料になります。
つまりどのような取引であれ、最初にこのスプレッド分は手数料として引かれているため、マイナスからのスタートになります。
言うまでもなくスプレッドが狭い取引所の方が、手数料コストの削減につながります。
また、取引所によっては売買そのものにも手数料が発生したり、取引所間の仮想通貨の移動に手数料が必要になったりする場合があります。
法定通貨のFX取引では、日本円の入金や出金を無料にしている業者が多いのですが、仮想通貨取引所の場合は特に出金に関して手数料が必要になることが多いです。
ビットコインとアルトコインによって手数料が違う場合もあり、取引所を利用する際は、購入する通貨ごとにどの程度の手数料がかかるのかを事前に理解しておくことが必要です。
安易なレバレッジ取引は控える
レバレッジ取引は実際の証拠金よりも大きな額で取引ができるため、少ない額でより多くの利益を出したい人にとっては魅力的な方法です。
しかしそれは同時に、大きな損失をするリスクがあるということです。
通常でも値動きが激しい仮想通貨市場でさらにレバレッジをかければ、法定通貨のFX市場よりもリスクの高い取引になる可能性があります。
特に初心者は安易なレバレッジ取引は避ける方が無難です。
値動きの激しさをしっかり考慮に入れて、損失を増大させない意識が大切です。
必ず余裕資金で行う
投資の基本は、余裕資金で行うことです。
生活上に影響のない資金であれば、大きな損失を出しても生活自体に悪影響が出ることはありません。
しかし、生活に必要な資金を投入すれば実生活に与える影響が大きく、しかも絶対に損はしたくないという意識からロスカットができずに損失を拡大する可能性も生じます。
レバレッジ取引では各取引所において強制ロスカットのシステムがあるため、証拠金の減少が一定の割合になれば自動的に損失確定が行われます。
その点は安心ですが、強制ロスカットになる時点で大きく資金を目減りさせているということでもあるため、その前に自分でしっかりロスカットラインを決めることも大切です。
レバレッジ取引ではなく、通常の取引でも、もちろんロスカットラインを自分で設定することは重要です。
まとめ
仮想通貨投資は、仮想通貨が将来広く普及していくことに期待して行うことが基本です。
しかし、短期的な価格の変動に振り回されると、仮想通貨投資のギャンブル的要素が強くなります。
特にレバレッジ取引においては、ギャンブル的な色合いが強くなるため注意が必要です。
仮想通貨投資は、短期的な状況よりも、長期的に仮想通貨がどのように社会が広がっていくのかを考察し、その予測のもとに行うというのが投資の本質的な意味合いに沿った形といえるでしょう。