
マネーロンダリングとは、資金洗浄とも呼ばれ、不正に得た資金を闇のルートで転送を繰り返すことでその出先を不明にするいわゆる使途不明金とする資金隠しです。
仮想通貨でもかつて大規模なマネーロンダリング事件が表ざたになったこともありますが、裏世界では頻繁に行われてきました。
そんなマネーロンダリングですが、実はそれほど遠くはない身近なところでも行われています。
仮想通貨取引を行う人は、こういった不正に常に敏感になり、情報収集をしておくことが、犯罪から身を守る予防策となるでしょう。
そもそもマネーロンダリングとは
「マネーロンダリング」には、日本語で「資金洗浄」という意味があります。
一般的には、脱税や粉飾決算などの犯罪行為で不法に得た資金を、闇のルートで転送を繰り返すことで、資金の出所を隠してしまう不法行為のことを指します。
Wikipediaには以下の様に記載してあります。
資金洗浄(しきんせんじょう)とは、違法な資金源を偽装する目的で犯罪収益を処理することである(FATF40の勧告)。
マネー・ロンダリング(英: money laundering)とも言われる。
アル・カポネやマイヤー・ランスキーが(三段階の)資金洗浄を草分けた。
段階は順に、プレースメント(預入)、レイヤリング(分別)、インテグレーション(統合)である。レイヤリングは電子送金をふくむ。
2009年に国連薬物犯罪事務所が報告した数値によると、犯罪収益は全世界国内総生産の3.6%を占め、2.7%(1.6兆USドル)が資金洗浄されている。
世界金融危機で流動資産を必要とした金融機関に、犯罪収益が資金洗浄のため供給された
引用:Wikipedia
日本でも厳しく取り締まられる
株や証券などが大口購入されることもあり、年間を通して巨額の資金がこのような闇ルートで転送されています。
このような、収益源の隠ぺい行為は、日本でも厳しく取り締まられています。
世界規模の犯罪組織なども存在しており、国際的な協力体制のもとにマネーロンダリングを予防する取り組みも行われています。
国際的なマネーロンダリング対策も推進
1980年後半からは、国際的なタスクフォース・FATFという資金洗浄に関する金融活動作業部会が設立され、マネーロンダリングの対策が推進されています。
日本でもこのような違法行為にする取り締まりは強化されつつあり、2007年1月からは本人確認法が一部改正され、現金でのATM振込み限度額が10万円に引き下げられました。
これにより10万円を超える現金での振込みを行う際には、窓口にて本人確認書類を提示することが義務付けられました。
10万円を超える現金でのお振込のお取り扱いについてのご注意
みずほ銀行では、2007年1月4日、ならびに2013年4月1日の法令改正の施行にともない、10万円を超える現金でのお振込について以下のお取り扱いとさせていただいております。
お客さまにはご不便をおかけする場合もあるかと存じますが、なにとぞご理解くださいますようお願い申しあげます。
*国際的な要請に基づくマネー・ローンダリング/テロ資金供与防止のための本人確認手続きに関する法令の改正にともなうものです。
引用:みずほ銀行
このように大きな資金を動かすときは、本人の確認が必要になったことで、不正な資金の転送がより厳しく監視されることとなりました。
仮想通貨におけるマネーロンダリングとは
では、仮想通貨ではどうなのかということです。
仮想通貨の世界でもマネーロンダリングは行われています。
マウントゴックス事件
記憶に新しい大規模な事件として、2013年に多額のビットコインが流出したマウントゴックス事件があります。
マウントゴックス事件は、かつて東京で運営されていたビットコイン交換所のマウントゴックスで発生しました。
この事件では、日本最大のビットコイン取引所であったマウントゴックスが突如閉鎖され、多額のビットコインが消失したのです。
この時、突如として消失したビットコインは、今なおその出どころが分かっていませんが、やはりこういった使途不明の資金だったのではないかと推測されています。
事件により仮想通貨のマネーロンダリングへの対策が強化
現在、ビットコインはすべての取引が正確に記録されるようになり、こういった闇のマネーロンダリングはできないようになりました。
しかし当時は、まだそこまで取り締まりが進んでおらず、マウントゴックス事件が発生してしまったのです。
仮想通貨のマネーロンダリングにおいては、現在はかなり厳しい対策がなされていますが、仮想通貨は性質上、口座から口座への転送が比較的容易に可能です。
そのため、今後もマネーロンダリングをするための便利な手段として利用される恐れは十分にあるでしょう。
仮想通貨におけるマネーロンダリングの方法
仮想通貨でもいくつかの方法でマネーロンダリングが行われています。
どのような方法があるのか、見ていきましょう。
不正に得た仮想通貨を小分けにして複数回送金する
一つ目は、不正に入手した仮想通貨を小分けにして複数のウォレットに送金する方法です。
この方法では、送金した複数のウォレットからさらに枝分かれして送金を繰り返すことで、やがてそのルートがわからなくなっていくようにします。
ウォレットはどんどん枝分かれしていくので、後を追うのが難しくなってしまうという仕組みです。
この方法は、銀行口座でも同じ仕組みで送金が行われていますが、現金の場合は一度現金化してしまうと追跡するのは容易ではありません。
これに比べ、仮想通貨には取引の履歴が残っているため、時間は掛かるかもしれませんが追跡をすることは十分に可能といえます。
ウォレットへ送金後、別の仮想通貨に交換する
そこで次のような方法もあります。
それは、ウォレットへ送金した後、別の仮想通貨へと交換してしまうという方法です。
これを何度も繰り返します。
さらに、海外の販売所や取引所を経由してしまうと特定するのは非常に困難を極めます。
このように、仮想通貨を利用した場合はうまく隠蔽できる方法もあるので、仮想通貨もマネーロンダリングに利用されてしまうのです。
日本で40万件超の仮想通貨マネーロンダリングが発生している?
2017年4月、改正犯罪収益移転防止法が施行
最近分かった調査によると、日本では2017年4月に改正犯罪収益移転防止法が施行され、マネーロンダリングが疑われる取引があった場合は、仮想通貨交換業者に届け出をすることが義務付けられました。
犯罪収益移転防止法は、犯罪による収益が組織的な犯罪を助長するために使用されるとともに、犯罪による収益が移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えること、及び犯罪による収益の移転がその剝奪や被害の回復に充てることを困難にするものであることから、犯罪による収益の移転の防止を図り、国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的として制定されたものです。
引用:犯罪収益移転防止法とは
この防止法によって、2017年の半年余りで、マネーロンダリングの可能性がある取引が40万件あったことが判明しました。
マネーロンダリング(資金洗浄)などの疑いがあるとして、金融機関などが昨年1年間に警察庁へ届け出た「疑わしい取引」は40万1091件(前年比0・4%増)で、届け出制度が始まった平成4年以降、最多だったことが2日、警察庁の年次報告で分かった。
引用:産経ニュース
ビットコインなどの主要仮想通貨は取引量が多いため、特にこのような悪用が多いとされています。
2018年、確定的な取引は600件以上
2018年には、マネーロンダリングが疑われる確定的な取引が600件以上あったとされており、かなり多いことがわかります。
交換業者からの届け出で、短期間のうちに頻繋に不自然な取引が行われていた可能性が生じています。
2017年4月から12月の間に報告された件数は、約600件以上にものぼり、特に10月からは激増したようです。
引用:コインTOKYO
警視庁でも、このような仮想通貨のマネーロンダリングに特別対策室が置かれて、さらに調査に乗り出しています。
現在も抜け道が存在
専門家のなかには、ブロックチェーンのシステムで仮想通貨のマネーロンダリングが防げるという意見もあります。
しかし、それはあくまでも管理体制が完璧に行われた場合のことで、現在でもまだその抜け道はいくらでもあるともいわれています。
今後は取り締まりがさらに強化される
今後、法的な整備がさらに進めば、取り締まりはさらに強化されると考えられています。
マネーロンダリングや所得隠しは、不正を隠蔽する行為です。
自分では知らない間にその一端を担いでいるようなことも有るので、知らない人との取引は、むやみに行わないほうがよいでしょう。
日本の仮想通貨マネーロンダリングに対しての対策
改正資金決済法が施行
このような状況を受けて、日本では改正資金決済法が施行され、2018年9月までに仮想通貨交換業者の登録を行うことを義務付けました。
「改正資金決済法」とは、図書券などの商品券や、Suicaなどの電子マネーに関するルールを定めた「資金決済法」に、新しくビットコインやイーサリアムなどの「仮想通貨」に関するルールを加えたものをいいます。
仮想通貨の普及に対して法整備が追いついていなかったため、時代の変化に対応させるべく、2017年4月1日に改正資金決済法が施行されました。
ただし、法施行時となる4月1日に業を行っていた会社が、9月末までに申請をしていれば、審査の結論が出るまでの間はみなし業者として業務を継続することは可能です。
登録審査とみなし業者
みなし業者についても審査が進められています。
そして登録審査は、公表されているチェックリストに基づく形式審査だけではなく、より厳密に審査を行うために、実質面も重視した審査が行われます。
- システム管理体制
- マネーロンダリングやテロ資金供与対策
- 分別管理態勢
- 詐欺的コインの排除
など、利用者保護に向けた内部管理体制などが整っているかを審査します。
そして、これらの項目の審査を毎年行うことで、会社の体制を保つことにも力を入れています。
匿名性の仮想通貨を排除
数ある仮想通貨の中には、ビットコインやイーサリアムと比べて匿名性が高く取り扱いが難しい通貨もあります。
このような仮想通貨の取扱についても規制が強化され、登録が認められていない通貨は取り扱い禁止となりました。
仮想通貨交換業者の体制を強化
このように金融庁は、犯罪者を取り締まることは難しいことから、まずは仮想通貨交換業者の体制の強化を図ったのです。
- 業務の遂行体制
- 財産的基礎
などの登録要件をクリアしている業者だけに、運営権が与えられました。
金融庁・財務局は仮想通貨を保証していない
しかしながら、このような厳しい審査を行っても金融庁・財務局が仮想通貨を保証しているわけではありません。
金融庁のウェブサイトには仮想通貨交換業者の記載がありますが、これは決して保証をしているものではなく、仮想通貨交換業者の説明に基づいて「資金決済法上の定義に該当する業者」であることを示しているだけなのです。
仮想通貨のマネーロンダリングで注意するポイント
知らず知らずのうちに、仮想通貨の取引でマネーロンダリングに巻き込まれてしまう可能性はゼロではありません。
そのため、個人でも対策しておくことが大切です。
ここからは、個人でもできる対策について見ていきましょう。
信頼性の低い業者からは購入しない
一つ目は、怪しい取引所や販売所からは絶対に購入しないということです。
特に信頼性が不明な業者とは仮想通貨の売買をしないことが大切です。
本人確認がない場合は怪しい
本人確認などを行わない販売所や取引所は、怪しいと思っておいた方がいいでしょう。
このような取引所や販売所は、マネーロンダリングに加担させられるリスクがあります。
海外の取引所は要注意
特に用心が必要なのは海外の取引所です。
そして流出事件後などで話題になっている業者には絶対にかかわらないでください。
できるだけ実績がある国内の仮想通貨交換業者を利用するのが得策です。
ウォレットの管理の強化
二つ目は、ウォレットをしっかりと管理するということです。
信頼できる取引所のウォレットを使うのはもちろんですし、パスワードも時々変更するなど工夫が必要です。
推測されやすいパスワードはNG
パスワードを読み取られたり、アカウントを乗っ取られる危険もありますから、パスワードには誕生日や電話番号など推測されやすい単純なものは使わないようにしましょう。
乗っ取られてしまうと、知らない間に売買が行われる可能性が高まりますし、場合によっては送金の受け皿となる口座として利用されることもあります。
2段階認証も活用し、セキュリティを強化
最近は2段階認証システムなどを使える取引所や販売所も多くありますので、2段階認証も設定しておきましょう。
ウォレットに限らず、ネット上のアカウントを守るセキュリティ意識はとても重要です。
草コインは取引しないようにする
三つ目は、マイナーな仮想通貨の取引はしないということです。
このようなマイナーなものは草コインといわれていますが、新しい通貨を購入することも時には危険をはらんでいます。
多くのコインが新規発行されているため、しっかりと見極める必要があるでしょう。
取引所の口座を放置しない
四つ目は、取引所などの口座を放置しないということです。
仮想通貨を取引するために口座を開設したものの、そのまま利用することなく放置しているケースは以外にも多いものです。
こういう口座は、まさに空き巣が狙う留守宅と同じなのです。
使用しない口座は、できるだけ登録解除するか、定期的にチェックするようにしましょう。
まとめ
このように仮想通貨市場においても、マネーロンダリングは増えています。
このマネーロンダリングに巻き込まれてしまわないために個人として出来ることは、自分の口座をしっかり管理することや怪しいと思われる取引所などでは購入しないといういうことです。
このようなポイントをしっかりと理解した上で、仮想通貨取引を行っていきましょう。