
ブロックチェーンと言うと少し詳しい方なら仮想通貨の基礎技術と言う意味で理解されているのではないでしょうか。
確かに仮想通貨の基幹技術としてブロックチェーンは存在してます。
しかし、現在ではそこから一歩進み、様々なビジネスシーンでこのブロックチェーン技術が利用されつつあるのです。
そういった現状を目の当たりにし、なぜ仮想通貨の技術がビジネスの場面にまで進出してきているのかと言う疑問を持つ方も少なくありません。
そういった疑問に対し、今回なぜブロックチェーン技術が注目されているのか、どんなビジネスの事例があるのかと言ったことや今後のブロックチェーンの展望、そしてそもそもブロックチェーンはどういったものなのかと言った疑問に対し解説を行います。
きっとこれを読めばこのブロックチェーンとビジネスとの関係を理解することができるようになるのではないでしょうか。
なぜ今ブロックチェーンに注目が集まっている?
ブロックチェーンに注目が集まっている理由として、データの改ざんが極めて困難であることに加えて、比較的安価にシステムを構築、運用できる点やデータを分散させることでそのデータを非常に長期にわたって保管できるというメリットがあるからです。
かつては一つないし複数のサーバーを中央で管理する存在があり、すべてのユーザーはそのサーバーにアクセスしてデータを閲覧、記録していました。
現在もその手法は健在なのですが、この方法では
- 極端に膨大なデータを処理できない点や中央管理でデータを改ざんできる点
- 中央管理のセキュリティを破ればそのデータのネットワークを簡単に破壊できる点
- サーバーなどを管理するデータセンターの維持管理が非常に高コスト
- データセンターが災害や紛争、テロによって破壊されたら、ネットワークが破綻する
と言った弱点を抱えています。
そういった弱点を克服するという意味でブロックチェーン技術はデータの管理を行うのに優れており、多くの企業や学術機関、組織が注目しているという技術です。
このように安全に、大量に、そして比較的安価にデータを管理できる可能性のある技術としてブロックチェーンは注目が集まっています。
実はIT企業以外にあまり縁のない企業にもこのブロックチェーン技術に注目していることから、インターネットに次ぐ技術革新と認知されています。
そもそもブロックチェーンとは
ブロックチェーンと言う言葉は知っていてもその意味を知っている方は意外と多くはありません。
ブロックチェーンのことを簡単に言うと先ほどお話しした通り「革新的なデータ管理技術」ということです。
このことについて仕組みやメリット、注意点について大まかにお話ししていきます。
仕組み
まず仕組みについてですが、今のデータベースはサーバーにアクセスしてデータを入力し、保存と言う仕組みが取られています。
しかし、ブロックチェーンはブロックと呼ばれる一定期間のデータのやり取りの記録の固まりをノードと呼ばれる参加するすべてのユーザー(システム設計時に制限できる)のパソコンやスマホに保存します。
そしてこのブロックの更新を行うには参加者の監視のもと同意がなされて初めてデータベースのデータが更新されていくという仕組みです。
つまり、サーバーにデータを保管するのではなく、利用者全員でデータを保管しデータの更新にも参加者の同意(これも設定で制限できる)がないとできない仕組みです。
メリット
ブロックチェーンに記載される記録は全て残るので履歴を改変できない、誰でも履歴が見られる、そして分散管理されているのでどこかに不具合が起こっても、全体が止まるということがありませんから安定性が高いと言ったものも挙げられます。
これらは冒頭にあげたブロックチェーンに注目する理由に近いです。
注意点
注意点としては同意が必要なためデータの更新に時間がかかる(これは同意人数を減らしてスピードアップできる)、データの取引量や更新の情報が増えるとさらに遅くなると言うのが現実的なものとして挙げられます。
また、ネットワーク参加者の50%より大きなマシンパワーを占有されると、データ改ざんが可能になってしまうことも挙げられます。
これは更新のための同意の仕組みがマシンパワーによる多数決やマシンパワーの大きい者に同意する権利が与えられると言ったものになっている場合で、悪意あるユーザーが用意した不正データの更新を他のユーザー全員が反対しても同意形成に至ってしまうというものです。
これは仮想通貨の初期で度々発生し、多くの仮想通貨が悪意あるユーザーによってその資産を奪われたという過去があります。
ちなみに現在は様々な試みでそういった状況を回避するような対策が立てられています。
ブロックチェーン業界の市場推移
ブロックチェーンは業界としてすでに市場を持っています。
この市場推移についてもお話ししていきます。
大まかな推移をお話しすると2017年度から売上高ベースで、前年比から倍々に増えているというのが市場の推移です。
矢野経済研究所の調査によると、
- 2017年度は3,114百万円
- 2018年度は8,070百万円
- 2019年度は17,150百万円
という右肩上がりの市場推移になっています。
矢野経済研究所は5月22日、国内ブロックチェーン活用サービスの市場規模が2019年は昨年対比112%増の171億円に達する見込みだという調査結果を発表した。3年後の22年には1235億円に達すると予測しており、17年から22年の年平均成長率は108.8%とみている。
引用:ITmedia
また、上記にも記載がある通り、3年後の22年には1235億円に達すると予測しており、17年から22年の年平均成長率は108.8%という調査結果が出ていることから、幅広い業界でブロックチェーンの活用が拡大すると見込まれます。
ブロックチェーン技術を使用したビジネスの事例
ブロックチェーン技術を使用したビジネスの事例はどういったものがあるのでしょうか。
医療保険会社、自動運転車、著作権管理と言ったものが挙げられます。
医療保険会社
医療保険会社の事例ではアメリカの大手IT企業と協力を行い、情報の共有、顧客名簿の管理、保険金の処理や支払いなどの非効率性といった問題を解決するということです。
ブロックチェーンの持つデータの堅牢性や改ざんできない安全性は保健医療の分野との親和性が高く、現在はアメリカの保険会社のみですが、将来的に日本でも導入される可能性があります。
自動運転車
自動運転車は日本の大手自動車部品会社トヨタが自動運転の車の情報管理にブロックチェーンを応用しようとしています。
MIT〔マサチューセッツ工科大学〕のメディア・ラボと協力して、トヨタはブロックチェーン・テクノロジーを専門とする一連のソフトウェア・パートナーと提携したことを明らかにした。ブロックチェーンは分散暗号化台帳テクノロジーで、bitcoinのような暗号通貨のベースとなっている。トヨタはこの提携により、ブロックチェーン・テクノロジーを次世代自動車開発に適用する方法を探るとみられる
引用:TechCrunch
自動運転車は将来的に非常に普及する可能性を秘めており、膨大なデータの管理をしつつ、履歴の改ざんなどセキュリティを高める必要があります。
そういった現状に対して改ざんに強く、膨大なデータ管理に強みをもつブロックチェーンを使用してビジネスを行う試みが検討されているのです。
著作権管理
著作権管理は日本の大手電機企業のコンテンツ管理会社が行っているもので、自社の持つ多くの作品の著作権の使用許可や利用状況と言った複雑な取引データをブロックチェーンによって管理することで確実な著作権管理を行うことができます。
実際のブロックチェーン活用によるトレーサビリティの事例
気になるのが実際にブロックチェーンを使用したトレーサビリティ(原料から小売りまでの経緯を記録し、履歴を追跡できる技術)の事例です。
ここではその具体的な事例として3つの事例を挙げていきます。
その事例は、フードトラスト、天然ゴムの管理、高級ブランド品の真贋管理です。
フードトラスト
フードトラストはアメリカの大手IT企業と食品会社、小売り大手3社との協力で、食品会社の生産から小売りに至るまでの流通経路をブロックチェーン技術で管理し、トレーサビリティで追跡可能にするという事例です。
食品の安全性の確保や異物混入などがあった場合の原因究明がより確実に、迅速に可能となります。
天然ゴム
天然ゴムの管理は日本の商社とその傘下の天然ゴム生産会社との間で行われるブロックチェーン活用によるトレーサビリティです。
天然ゴムの採取から流通の履歴を管理に不正や改ざんなどを防ぐことで、天然資源の適正な流通を目指す試みとして行われています。
高級ブランド品の真贋管理
高級ブランド品の真贋管理は、フランスの大手ブランドメーカーが自社が製造するバッグなどの流通履歴をEthereumの技術を活用したブロックチェーンプラットフォームで管理するという事例です。
これにより、不正な流通経路での偽ブランドの混入を防ぎ、自社の本物の製品を適正に流通させることに利用されます。
これからのブロックチェーンビジネスの将来性
ブロックチェーン技術は一部の仮想通貨の取引のみに使われていましたが、顧客管理や著作権管理といった膨大なデータの管理やトレーサビリティの弱点である共有した履歴の管理と言ったものを解決することができるという強みを持っているのです。
そのため、今後は非常に広い範囲に展開される技術であり、利用される分野の拡大とその分野自体での利用の浸透によりこれからのブロックチェーンビジネスは高い将来性を持っています。
まとめ
ブロックチェーン技術はかつて一部の仮想通貨を取り扱う人たちだけの言葉のように捉えられていました。
しかし、その優れたデータ管理の技術として、注目されるようになり現在では大学や企業がこぞってその応用技術の確立やビジネスシーンの応用に乗り出しています。
このような潮流にあるブロックチェーンは今後予期しない分野にも浸透し、気づくと身近な基幹技術の一つとして世の中へ溶け込んでいるという将来像も決して夢物語ではありません。
ブロックチェーン技術はもはや仮想通貨の専門用語ではなく、すべての産業や業界における標準的なキーワードになりつつあるのですから。