
仮想通貨には多くの斬新な技術や設計が見られます。
代表的なものとして、根幹の技術である分散型台帳、ブロックチェーンによるデータの管理や自動で取引を行うイーサリアムが開発したスマートコントラクト、近年ではブロックチェーンを取り巻くように複数のサイドチェーンと呼ばれるブロックチェーンをつなげたものも開発されてきました。
そんな中、プライバシー性の強化とネットワークのスケーラビリティ向上を目的に設計されたミンブルウィンブルというものがあります。
このミンブルウィンブルはどんなものなのか、その概要や特徴、そして有力な仮想通貨の一つであるライトコインとの関係などをまとめました。
この記事を読むことで、様々な話題を振りまいている新しい技術、ミンブルウィンブルについてより多くのことを知ることができるのではないでしょうか。
ミンブルウィンブルとは
ミンブルウィンブルとは、ブロックチェーンの設計方法の一つで、仮想通貨における新しい技術(プロトコル)です。
ミンブルウィンブル(MW)はトランザクションを構造化して保存する新しい方法を採用したブロックチェーン設計です。Proof of Work (PoW)の新しい実装であるMWはプライバシーを強化し、ネットワークのスケーラビリティを改善します。
ミンブルウィンブル(Mimblewimble)の設計は2016年の中頃に、仮名のTom Elvis Jedusorによって生まれました。確かに、彼はコアのアイデアをシェアしようとしましたが、最初のミンブルウィンブル(Mimblewimble)のドキュメントにはいくつかの疑問点がありました。これ疑問を解消するために、Blockstreamの研究者のAndrew Poelstraがオリジナルのコンセプトを研究し、改善しました。そのすぐ後に、Poelstraは2016年10月にミンブルウィンブル(Mimblewimble)という題名の論文を発表しました。
独自のトランザクションの構造化と保存方法によって、いくつかの仮想通貨の技術として採用されています。
この技術の原点は、2016年半ばにペンネーム「Tom Elvis Jedusor(ハリーポッターのヴォルデモート卿のフランス名)」によって半匿名の形で発表されたアイデアが元になっています。
このアイデアをベースにして、ビットコインの開発組織BlockstreamのリサーチャーAndrew Poelstra氏が改善を行ったことによって今回紹介するミンブルウィンブル(Mimblewimble、ハリーポッターシリーズに出てくる口封じの呪文の名前)という形にしました。
この技術はプライバシーに配慮されたものとなっており、従来の仮想通貨に表示され公開されてしまう情報(送り主のアドレス、仮想通貨の金額、受け取り主のアドレス)を匿名化し、さらに取引記録もされません。
この技術に注目し、世界で初めて実装したのが仮想通貨のGrinで、これに新しい解釈を提供した仮想通貨のBeamにもこのミンブルウィンブルが実装されました。
こういった実績から、プライバシーを仮想通貨に与えるという目的を持つミンブルウィンブルは今後、多くの仮想通貨に実装される技術になり得るといわれています。
ミンブルウィンブルの特徴
ミンブルウィンブルの特徴は3つあります。
- スケーラビリティ問題の解消
- 匿名性を仮想通貨に与える
- ハリーポッターを意識した名称
スケーラビリティ問題の解消
スケーラビリティ問題の解消として、送金データを記録しないことが挙げられます。
これはミンブルウィンブルの特徴で、通常あらゆる取引データが記録される仮想通貨において金額や送り主、受け取り主の記録をしないことによって取引データが飛躍的に小さくなり、小さくなることによってブロックチェーンにかかる負荷が著しく低下し、それによって仮想通貨の処理が高速化されるというもので、これによってスケーラビリティ問題の解消につなげることができるとされています。
匿名性を仮想通貨に与える
通貨に匿名性を与えるというのも特徴です。
これはウォレットアドレスが存在しないことによるもので、送金する際の取引量(金額)はもちろん、先ほどもお話しした通り送り主や受け取り主の情報もノード(ネットワークの処理を行うユーザー)に送られないため、すべての取引がデフォルト状態で匿名になるという仕組みによります。
そして、この処理を行うコンセンサス方式はPoW(Proof-of-Work)を採用し、ビットコインのように処理能力が高いユーザーが承認するという形態をとっています。
このように、仮想通貨のブロックチェーンに重要な情報のみを保持する形にしており、処理能力によって承認できると言う形式をとることで匿名性を保ちつつ高速に処理を行います。
この取引情報を削除する技術をカットスルーと呼び、冗長なトランザクション情報を削除することでブロックデータを削減し軽量化を実現しているのです。
ちなみに完全に匿名になるわけではなく、トランザクションデータは送信当事者にのみ表示されるため当事者間の情報はきちんと処理され実用性を確保しているというのも特徴です。
これにより第三者からは情報が分からないうえ、当事者はきちんと情報を知ることができるという便利さを実現できている技術と言えるのではないでしょうか。
ハリーポッターを意識した名称
3つ目の特徴が、開発者の名前やミンブルウィンブルの名称自体にハリーポッターシリーズの名前が使われているという点です。
世界的な作品名を利用することで、親しみを与える・関係者の匿名性を高めるといった目的がありますが、いずれにしてもこの技術を開発した人物がハリーポッターを知っているということは確かでしょう。
このような特徴を持つミンブルウィンブルですが、処理能力は向上するもののまったくの新設計による匿名仮想通貨に比べるとやや処理能力は劣るという点が挙げられる他、量子コンピューター(高度で強力なコンピューター)に対して耐性がないため、今後も技術の向上が求められるという課題もあります。
また、このミンブルウィンブル自体実験段階であり、実用性と信頼性がそこまで高くないという懸念もあり、そういった面でも今後多くの仮想通貨に実装させて信頼性を高めていく必要があります。
ミンブルウィンブルとライトコインの関係
ミンブルウィンブルはすでにGrinとBeamに実装されています。
しかし、今までメジャーな仮想通貨の銘柄には実装されていませんでした。
そんな中、ライトコインがこのミンブルウィンブルの技術を利用する(厳密にはオプトインという形で)と表明したことから大変な話題となっています。
これがミンブルウィンブルとライトコインとの関係です。
オプトインという条件付き
ただし、冒頭でもお話しした通り「オプトインという形で」という条件が付いています。
オプトインとは、ライトコインのユーザーの同意を形成したうえで実行するという意味を持っており、あくまでライトコインの運営の一任で実現するというわけではありません。
ライトコインが持つ課題を解消し、新たな風を吹き込む目的
しかし、ライトコインは近年開発に手間取っており、開発自体が停止したという噂がたつほど停滞が目立っています。
そして、価格も2019年11月現在低下の一途をたどっており、今後の展開が懸念されるメジャーな仮想通貨となっているのが現状です。
そういった意味で、ミンブルウィンブルを導入することによって、ライトコインが抱えているスケーラビリティ改善を行うのに加えて、匿名性という新しい概念を持ち込ませようという目的もあるのです。
既存のコインにも導入される可能性もある
この匿名性を持つことで、法定通貨のように悪人が使う1万円も善人が使う1万円も同じ1万円というような意味付けができるようになり、価値も保てるというメリットを引き出すことができます。
ライトコインでの成功が認められれば、今後は多くの既存のコインでこのミンブルウィンブルが導入されることが予想されるのです。
ミンブルウィンブルに対する評判
ミンブルウィンブルに対する評判として、Twitter上の気になるツイートを3つ紹介し、まとめました。
好材料⁉️
ミンブルウィンブルはすごい注目してるけど…
プライバシー性を強化って言ったら響きはいいけど匿名通貨としてやっていきます宣言⁉️#仮想通貨 #LTC #ライトコイン #BEAM #ミンブルウィンブル #Mimblewimble https://t.co/BvBh0Um6Uz— びたー (@bittersend81) 2019年2月9日
匿名通貨として宣言しているような行動に対して動揺が見られます。
日経新聞にも取り上げられました!https://t.co/waBHQ8gp3q#Beam #Recruit #MimbleWimble #ビーム #ミンブルウィンブル #リクルート #RSPBlockchainTechFund https://t.co/4Gd6syQXhV
— Yuki Tanaka (@_tanayuk) 2019年2月18日
日本企業のリクルートが設立した投資会社からミンブルウィンブルを搭載した仮想通貨のBeamが出資を受けたことを驚いています。
.@grinMW / #mimblewimble sounds like what Bitcoin is supposed to be, solving multiple important problems at once & doing just one thing — private money — extremely well. But it’s still vulnerable to wide and shallow double-spend attacks since it all sits on top of proof-of-work.
— Joe Kelly (@joekelly100) 2019年11月8日
不正アクセスなどの攻撃に弱いという点を懸念しています。
ミンブルウィンブルの評判は、匿名性を高めているという点に関して好意的にとらえると言う一方、懸念する意見もありました。
また、日本の大手企業のリクルートが投資を発表したBeamの案件についても好意的にとらえている方は多くいます。
ただ、海外では攻撃に対する脆弱性を指摘する意見もあり、全体的に好意的な意見があるものの、懸念する意見も少なくはないというのが、このミンブルウィンブルに対する評判です。
ミンブルウィンブルのまとめ
ミンブルウィンブルは既存の仮想通貨を含め、送金データをカットすることで匿名性を与え、処理能力を高める技術です。
現在ライトコインでの実装が検討されており、ライトコインでの実装が実現し実績を出せれば、多くの通貨で採用される可能性を秘めた技術と言えるのではないでしょうか。