
ビットコインからはじまったブロックチェーン技術は、企業に導入できるとして日夜研究が進んでいます。
ブロックチェーン技術を企業に取り入れることで大きな影響を与えるのが「コスト」です。
ブロックチェーン技術を取り入れることによって“コスト削減”ができると多くの人を期待させているのです。
この記事では、ブロックチェーン導入によるコスト削減について解説します。
ブロックチェーン導入がコスト削減になる理由
ブロックチェーンを導入することで、コスト削減をすることができます。
このコスト削減とは、導入した企業にとってのコストと、ユーザーにとってのコストです。
ネットワーク構築コスト削減
従来の企業ネットワークはサーバが情報の全てを一括管理する中央集権的な情報管理システムでした。
このため、非常に高価なハードウェアサーバーを用意したり、そのサーバー守るためにセキュリティに場合によっては数千億円もの費用を必要としています。
しかし、「P2Pネットワーク」を構築するブロックチェーン技術を導入することでネットワーク構築コストを大きく削減できます。
ブロックチェーンのP2Pネットワークは、ネットワークに参加するパソコン全てが同じ情報を共有しており、相互監視体制をつくっており、情報を一括管理するサーバーを必要としません。
このため、高価なハードウェアであるサーバを用意したり、サーバを保護するための多額のセキュリティ費用も削減できるのです。
作業効率化による企業のコスト削減
ブロックチェーン技術を導入すると、情報を紙媒体ではなくて電子媒体で扱えるようになるので作業が効率化します。
また、ブロックチェーン内で情報を全ての共有できるために、必要な情報全てをすぐに手に入れられるので作業が効率化します。
ブロックチェーンネットワークに外部の提携企業を加えることで顧客情報を共有することによる作業効率化も可能となります。
また、ブロックチェーン技術によるスマートコントラクトによる作業効率化も可能となります。
スマートコントラクトとは、自動販売機によく喩えられる契約システムです。
企業があらかじめブロックチェーン内につくっておいた契約システムをユーザーが利用して自動で契約処理をするシステムです。
このため、企業側の人手を介することなくユーザーが自動で契約できるから作業が効率化します。
ブロックチェーン技術を導入すると、企業はこういった様々な作業効率化をして人件費や諸経費削減をすることができるのです。
ブロックチェーンスタートアップ企業「Data Gumbo」のアンドリュー・ブルースCEOは、「紙媒体契約書に代わり、ブロックチェーン技術を導入することで石油企業は30%コストを削減することができる」との見解を述べています。
Anthemisグループは分析レポート「The Fintech 2.0」で、銀行にブロックチェーンを導入すれば2022年までに150〜200億ドルのコスト削減ができるとしています。
また、保険業者の「BlockClaim」は保険業務にブロックチェーン技術を導入すると20%コストを削減できるとしています。
ユーザーの利用コスト削減
企業がブロックチェーン技術を導入することによって、ユーザーの利用コストを削減することもできます。
ブロックチェーン技術のスマートコントラクトによって取引に関与する人員を最低限にできるので、利用コストが減ります。
また、ブロックチェーンによる取引は基本的に仮想通貨で支払いをします。
このため、送金手数料を大幅に削減できます。
従来の国際的送金は金融インフラが綺麗に整備されていないので、5%~20%という非常に高い送金手数料を必要としていました。
しかし、ブロックチェーンを導入して仮想通貨で送金することによって送金手数料を2%~3%程度に削減できるようになり、大幅なコスト削減ができます。
ブロックチェーンを導入するメリット
企業がブロックチェーンを導入するメリットはコスト削減以外にも沢山あります。
情報の永続性
ブロックチェーンはネットワークに参加している全てのパソコンがネットワーク開始直後からの取引情報を全て記録しています。
従来のサーバが一括管理するネットワークはサーバに不足の事態があると情報が失われてしまいますが、ブロックチェーンはネットワークに参加している全てのパソコンが同じ全ての情報を記録しているので情報が失われる可能性がほぼなく、情報の永続性というメリットがあります。
情報改竄防止
ブロックチェーンには、情報改竄防止というメリットもあります。
ブロックチェーンは取引情報の塊であるブロックをチェーンで連結するように次々と繋いでいくシステムになっているのですが、このブロックチェーンの情報は「ハッシュ値」という数字に暗号化しています。
そして、ブロックチェーンのブロックは一つ前のハッシュ値を交えて暗号化しています。
ハッシュ値は情報が一文字でも変わると大きく変化するので、もしハッキングによって情報が改竄されたら以降のブロック全ての情報にエラーが発生します。
このため、改竄されると一瞬でどの情報が改竄されたかわかるので改竄を抑制することができます。
最新情報のリアルタイム共有
ブロックチェーンでは、ネットワーク参加している全てのパソコンでリアルタイムに情報が更新されるので、リアルタイムで最新情報を共有できるメリットもあります。
このブロックチェーンネットワークのメリットを使って、食品の流通過程を監視する「トレーサビリティ」のシステムを導入できたりします。
トークン化による流通活性化
企業がブロックチェーン技術を導入すると、高額商品のトークン化による流通活性化ができます。
土地のような高額商品は買い手がつかずに流通が滞りがちです。
しかし、ブロックチェーンによって高額商品をトークン化することで、複数の人が高額商品を分割購入することができるようになるので流通が活性化します。
ブロックチェーン技術を導入する際の注意点
コスト削減などメリットが多いブロックチェーン技術の導入ですが、ブロックチェーン技術を導入する際の注意点もいくつかあります。
企業の信用力が問われる
ブロックチェーンを導入する際は、企業の信用力が問われるので注意が必要です。
ユーザーがブロックチェーンを利用して支払いをする場合、基本的に企業が発行する独自仮想通貨を利用します。
仮想通貨は発行している企業が倒産などしたらゴミになるリスクがあるので、ユーザーがそのリスクに目をつぶって利用する気になるだけの企業の信用力が必要となります。
個人情報の削除が難しい
ブロックチェーンの情報の永続性というメリットは、時にはデメリットともなるので注意が必要です。
ブロックチェーンはネットワーク開始直後から蓄えた全ての情報をネットワークに参加しているパソコン全てがそれぞれ保持しています。
このため、ユーザーから個人情報を削除してほしいという依頼があっても対応できません。
仮に、個人情報削除依頼に対応するならば莫大なコストが必要になります。
ブロックチェーンの導入だけではコスト削減にならない
コスト削減のためにブロックチェーン技術を導入したとしても、企業体質を変えないとコスト削減にならないので注意が必要です。
ブロックチェーンを導入すると、紙媒体ではなく電子媒体で仕事を行うことで業務効率化をしてコスト削減ができます。
しかし、従来の業務のように書類を印刷してハンコを押すといった手間のかかる作業を要求するとコスト削減効果が非常に低くなります。
ブロックチェーン技術でコスト削減に繋がった導入事例
不動産業者レントベリー

出典:Rentberry
全世界5000都市に20万件の物件をもつ海外の不動産業者レントベリーは、ブロックチェーン技術を導入して不動産オークションを実施しています。
ブロックチェーン技術のスマートコントラクトによってオークション契約にかかわる人員を削減できるので、業務効率化による企業やユーザーのコスト削減ができます。
また、独自仮想通貨のベリートークンで支払いをするので、送金手数料削減によるユーザーの利用コスト削減も実現しています。
ジャパンネット銀行や富士通

出典:techcrunch
実証試験段階ですが、ジャパンネット銀行や富士通がブロックチェーンを導入して紙媒体ではなく電子媒体で業務をすることで効率化し、コスト削減を試みています。
また、ジャパンネット銀行と富士通はブロックチェーンで情報を共有することで更なる効率化によるコスト削減も行っています。
新興企業 アトラント

出典:ATLANT
2016年に設立された新興企業のアトラントは、ブロックチェーン技術を導入してスマートコントラクトによって賃貸物件を貸し主と借り主が直接契約するシステムを提供しています。
スマートコントラクトによって契約にかかわる人員を最低限にできるので、ユーザーは低コストで借りられるようになります。
まとめ
企業がブロックチェーン技術を導入すると、電子媒体で業務できる・スマートコントラクトによる自動契約・情報共有などの理由で業務効率化をして人件費や諸経費を削減してコスト削減が可能となります。
しかも、スマートコントラクトによる自動契約や、仮想通貨送金による送金手数料削減などによってユーザーの利用コストも削減できます。
ブロックチェーン技術導入は、個人情報削除が難しいといったデメリットもありますが、企業にとってもユーザーにとってもメリットが大きいので、企業のブロックチェーン技術導入はどんどん加速していくと予測できます。