仮想通貨のためのシステムとして普及したブロックチェーン技術は、その応用力の高さから金融分野にブロックチェーン技術が取り入れられるようになりました。
このため、仮想通貨へのブロックチェーン技術の利用を「ブロックチェーン1.0」、金融分野へのブロックチェーン技術の利用を「ブロックチェーン2.0」と表現します。
そしてついに、金融分野以外へのブロックチェーン技術の応用も始まっており、これを「ブロックチェーン3.0」といいます。
そんな「ブロックチェーン3.0」の代表的な存在が“不動産業界”です。
この記事では、不動産業界へのブロックする技術の応用について改善します。
ブロックチェーンの影響は不動産業界にもある理由
2013年「国際ブロックチェーン不動産協会」が設立された
ブロックチェーン技術の誕生は、不動産業界に革命をもたらすとして大きな影響を与えました。
このため、不動産業界にブロックチェーン技術を取り入れられるとすぐに理解した業界関係者は、2013年に「国際ブロックチェーン不動産協会」というものを設立しました。
ビットコインがスタートしたのが2009年のことなので、非常にスピーディーな対応といえます。
国際ブロックチェーン不動産協会には、ブロックチェーンエンジニアや不動産専門家の企業や個人が集まっており、不動産業界にブロックチェーンをどのように応用するのか研究をしています。
不動産業界の問題を解決するのに最適なシステム
では、なぜブロックチェーン技術が不動産業界に大きな革命をもたらすのでしょうか。
その理由は、ブロックチェーン技術の「P2Pシステム」と呼ばれる分散型プラットフォームとしての能力が、不動産業界が抱えている「不動産取引コストが高い」「不動産取引手続きが面倒すぎる」といった現在の問題点を解決するのに最適なシステムだからです。
P2Pシステムは様々なメリットがある
P2Pシステムでは下記のような特徴があります。
- ブロックチェーンのネットワークに誰もがアクセスして参加できる
- 参加者全員が同じ取引情報を全て共有して相互監視ができる
- 情報をネットワーク参加者全員で管理するから管理者がいない
こういった特徴のあるP2Pシステムを不動産業界に取り入れると、中央集権的な不動産業界では不動産取引コストを大きく引き下げられたり、煩雑な不動産手続きを簡略させられるのです。
不動産業界にブロックチェーンが与える影響
では、ブロックチェーン技術が不動産業界にどのように影響を与えるかもう少し詳しく解説しましょう。
情報共有によるコスト削減
不動産業界は、政府が登記情報の管理者となっている中央集権的な仕組みとなっています。
日本では法務局が管理者となっており、この情報は法務局から入手しなければ確認できません。
管理者が全国の登記情報を集めて処理しなければならず、不動産業者はその情報を手間をかけて入手しなければいけないから不動産取引のコストが非常に高くなっているのです。
しかし、ブロックチェーン技術を取り入れることによってネットワーク参加者全員で登記情報を共有できるようになるので、すぐに情報を入手できるためコストの削減が可能となります。
スマートコントラクトによるコスト削減
ブロックチェーン技術には、ブロックチェーンネットワーク上に契約条件を設定し、その設定した契約条件を満たされた場合に契約を自動で実行する「スマートコントラクト」というシステムがあります。
このスマートコントラクトによって、従来の紙媒体だった契約書を管理が楽な電子化をしたり、契約に必要な不動産登記や決済といった業務を全て自動化できるので、契約に関わる人を最大限省いて不動産取引ができるようになり、人件費を削減して不動産取引におけるコスト削減が可能となるのです。
手数料大幅削減
不動産取引をすると大金が動きます。
このため、基本的には金融機関にお金を振り込むのですが、手数料がかかります。
海外の不動産を投資のために購入する場合は、海外送金手数料が非常に高くなります。
しかし、ブロックチェーン技術を取り入れると手数料が非常に安い仮想通貨で不動産取引をできるので、手数料を大幅削減できます。
ユーザー間取引によるコスト大幅削減
不動産取引には不動産業者などの仲介業者の関与が必須でした。
しかし、ブロックチェーン技術を取り入れることで仲介業者を排しユーザー間取引によってコストを大幅に削減できるのです。
また、ユーザー間同士で仲介業者を挟まずに直接契約を結んで賃貸契約することも可能となります。
不動産という大規模な取引を専門家が関与しないユーザー間取引で行える理由は、ブロックチェーンの安全性が大きな理由です。
ブロックチェーンはネットワークが始まってからの取引情報全てを各ネットワーク参加者が保有しており、いつでも取引情報を確認できます。
このため、ハッキングによる情報書き換えや取引による不正(たとえば、不動産取引代金を払っていないのに払ったと嘘をつくなどの詐偽)を排除して安全性を担保できるからユーザー間取引を担保できます。
人手を拝するスマートコントラクトも、この安全性があるからこそ成り立つシステムです。
取引の流動化
ブロックチェーン技術を取り入れることによって、不動産の流動化ができます。
不動産は売りに出せば必ず売れるわけではありません。
しかし、ブロックチェーン技術によって不動産業者各社がもつ不動産情報を全員が共有できるので、今まで日の目を見なかった売れ残り不動産に対する需要を発掘することが可能となるのです。
また、ブロックチェーンを取り入れることで不動産をトークン化できます。
トークン化することによって一つの不動産を複数の人が分割購入することが可能となり、高額で売れない不動産を分割販売できるから流動性がアップします。
不動産取引の手間を省ける
不動産取引では、従来は信頼性を担保するために第三者による保証が不可欠でした。
また、様々な紙媒体の契約書を書かなければなりませんでした。
しかし、ブロックチェーン技術を取り入れることによって安全性を担保できるから保証人を用意する必要がなくなるのです。
また、電子媒体で自動的に契約できるため、不動産取引ユーザーも管理する不動産業者も手間を省けるようになります。
賃貸契約時の顧客の手間を省ける
賃貸契約時は、ガス・電気・水道などライフラインの契約もしなければなりません。
しかし、不動産業者が他の業種の業者とブロックチェーン技術を駆使して情報を共有して提携をすれば、賃貸契約をするだけでライフラインの契約が可能となります。
ブロックチェーン技術の懸念点
ブロックチェーン技術の懸念点はいくつかあります。
情報を誰でも閲覧可能
ブロックチェーンはネットワーク参加者が誰でも情報にアクセスして閲覧できるメリットがあります。
これはメリットであると同時に、デメリットにもなります。
ネットワーク参加者が不動産業者だけならば問題ありませんが、ユーザー同士の不動産取引を実現する場合は、ネットワーク参加者に悪意ある人物が紛れ込む場合があります。
悪意ある人物がネットワークから入手した情報を使って悪事を働く懸念があります。
仮想通貨の安全性
ブロックチェーン技術を不動産業界に取り入れた場合、仮想通貨で不動産を売買することが基本になります。
しかし、仮想通貨はその仮想通貨を発行している業者が倒産したら無価値なデータになってしまいます。
このため、不動産取引で手に入れた多額の仮想通貨が無価値になってしまう懸念があります。
不動産業界にブロックチェーン技術が活用されている事例
ブロックチェーンによる賃貸契約簡略化
積水ハウス、KDDI、日立製作所が共同でブロックチェーン技術を導入して、賃貸契約簡略化を行いました。
積水ハウスグループやKDDIが持っている本人確認情報をブロックチェーンで共有して連携させることで、賃貸契約手続きと電気・ガス・通信などの申し込み全てを一律で可能にするサービスです。
書く必要のある契約書を大きく削減できます。
不動産オークション
全世界5000都市に20万件以上の不動産を保有している海外の不動産業者であるレントベリーは、ブロックチェーン技術を取り入れてオークションを開催しています。
世界中の参加者全員がオークションに出品される不動産情報をリアルタイムで共有して、レントベリーが発行している仮想通貨のベリートークンで支払いをします。
仲介業者なしでユーザー間で直接賃貸契約&不動産トークン化
アトラントという海外の不動産業者は、ブロックチェーン技術を取り入れることによって、仲介業者なしでユーザー間で直接賃貸契約を実現しています。
また、不動産をトークン化することによって投資しやすい商品にし、流動性を高めています。
ブロックチェーン技術を活用した不動産業界の将来性
ブロックチェーン技術は、不動産業界の長年の問題点であるコストの高さを大きく減らせる画期的なシステムです。
しかも、スマートコントラクトによる自動契約などでユーザーや不動産業者の手間を減らせたりするため、今後も不動産業界にどんどん取り入れられると予想でき、将来性は抜群です。
しかし、ブロックチェーン技術はビットコインとリップルでも違うように、様々な種類があってシステムが細部で異なります。
このため、不動産業界に取り入れるブロックチェーン技術を統一しない限り、不動産業界全てをブロックチェーンネットワークで結びつけて、政府を不動産の管理者から外すのは難しいでしょう。
不動産に関するおすすめ記事は下記をご覧下さい。
まとめ
ブロックチェーン技術は、スマートコントラクトなどによって不動産業界を悩ませていたコストの高さを大きく削減できる夢の技術です。
しかも、契約が簡単になるから手間を省けるメリットもあります。
また、ブロックチェーン技術で不動産をトークン化することもできるから「不動産を売りに出してもすぐに売れない」という問題も改善できます。
ブロックチェーン技術は不動産業界の救世主だといえます。