
みなさんは、中央銀行デジタル通貨についてご存知でしょうか?
今財布にいれているお金が全てデジタル化されて、スマホや専用のタブレット等に移せたら楽だと思いませんか?
細かい小銭のやりとりもなく、あらゆるお会計をスムーズに行うことができますよね。
そういった利便性をもたらすために開発されているのが、デジタル通貨になります。
ですが、このデジタル通貨には普及させればいいというわけではないリスクも孕んでいます。
そういったリスクや“電子マネー”や“仮想通貨”との違いについても詳しく解説していきます。
デジタル通貨については詳しく知らない方にはぜひ最後まで読んで頂きたい内容となっております。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは
中央デジタル通貨とは、その名の通りで国内銀行のリーダーである中央銀行が発行するデジタル通貨のことです。
日本、中国、スウェーデン、ベネズエラなどの中央銀行でデジタル通貨の発行にむけて積極的に開発が進められています。
もし、日本でデジタル通貨が発行されることになれば“デジタル円”といった呼び方になるかもしれません。
国のデジタル通貨になるためには、3つの条件を満たす必要があります。
- 中央銀行の責務である
- 法定通貨との交換が可能
- 通貨がデジタル化されている
通貨と言えば日本人である私たちは、一般的に硬貨や紙幣を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、数千年前では貝殻が貨幣として扱われていた時代もありますし、時代とともに、米や宝石といった様々なカタチをとりつつ通貨は変わってきています。
現代社会では、クレジットカードで決済を行うことはごく普通なことですし、今ではモバイル決済やネット決済など、決済サービスのネットを利用した簡略化が進んでいることから考えると、法定通貨のデジタル化というのは自然の流れですね。
ただ、法定通貨のデジタル化というのは、世界の金融システムに大きな影響を与えるとい調査結果が出ているように、デジタル通貨の発行は慎重に行うべきだという専門家もいます。
デジタル通貨と仮想通貨は似たようなものにもみえますが、違いはあるのでしょうか?
デジタル通貨と仮想通貨は何が違うのか
デジタル通貨と仮想通貨が同じような意味で使われる場面もありますが、この2つでは本質的な仕組みが異なっています。
仮想通貨とは
仮想通貨とは、IT技術を利用して生み出された通貨であり、インターネット上で利用可能な暗号化された通貨のことを指しています。
基本的に仮想通貨は誰かが管理をしているわけではなく、ブロックチェーンなどの仕組みによって集団で発行枚数や保全性を担保しています。
また、仮想通貨の特徴として、国に依存しないバーチャルな世界の独自のデジタル通貨であるということもあります。(一部の仮想通貨を除く)
デジタル通貨との違い
デジタル通貨とは、仮想通貨を含む通貨がデジタル化されたものを指している言葉です。
なので、仮想通貨はデジタル通貨でありますが、デジタル通貨は仮想通貨ではありません。
例えば、キリンは動物ですが動物といったらキリンではないですよね。
動物には、キリン以外にもゾウやライオンなど様々な動物が含まれます。
なので、動物というジャンルにキリンが含まれているのと同じように、デジタル通貨という幅が広いジャンルに仮想通貨が含まれているという認識で問題なさそうです。
デジタル通貨と電子マネーもデジタル通貨と仮想通貨の関係と同じように使われている場合が多々ありますが、その違いはあるのでしょうか?
デジタル通貨と電子マネーの違い
デジタル通貨と電子マネーも本質的な部分で違いがあります。
電子マネーとは
電子マネーとは、現金の代替となる支払い手段の一種でありますが、電子マネーの定義は統計や調査によって異なるため、必ず一様になっておりません。
ですが、一般的に企業などで制作されたシステムを用いて、“法定通貨を電子化しただけのもの”と認識していいでしょう。
つまり、実際の価値は法定通貨そのものとなんら変わりはなく、ただ持っている硬貨や貨幣が持っている電子端末に電子マネーとして変換されているだけのものになります。
仮想通貨との違いは、ここにあります。
仮想通貨は、法定通貨を新たな仮想通貨というものに変えるため、電子マネーとは全く別物になります。
では、デジタル通貨との違いはどうなるのでしょうか?
デジタル通貨との違い
電子マネーとデジタル通貨の違いというのは、仮想通貨とデジタル通貨とほぼ同じです。
デジタル通貨という大きいジャンルに電子マネーが含まれているという構図になっています。
仮想通貨とデジタル通貨の違いも含めると、デジタル通貨という大きいジャンルに仮想通貨と電子マネーの両方存在しているということになります。
電子マネーをゾウ、仮想通貨をキリン、とした場合にデジタル通貨は“動物”というジャンルになるといったとらえ方で問題ありません。
デジタル通貨と電子マネーや仮想通貨との違いは解説させて頂きましたが、デジタル通貨を利用することのメリットについても詳しく解説していきます。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)のメリット
デジタル通貨が普及することで様々なメリットがユーザーに享受されますが、そのうちの2つ紹介させて頂きます。
ユーザーの利便性が向上する
法定通貨がデジタル化されることによって、支払いなどの場面でユーザーの利便性が一気に向上します。
クレジットカードを利用したことがあるかたは簡単に想像できると思いますが、支払いの場面で細かい小銭のやりとりをする必要がありません。
すでに使いきれないぐらい大金を持っている方であれば1万円札のみでお会計をして“釣りはいらない”という発言もできますが、そういう方でも1万円札を何枚も持つ必要がなくなります。
経済政策を打ち出しやすくなる
これはユーザーというより国のメリットになりますが、デジタル通貨の普及がより進めば中央銀行が通貨の流通量をよりコントールしやすくなるため、有効な経済政策を打ち出しやすくなります。
日本銀行は既に通貨量の調整を行っていますが、現金決算が主な決済の手段となっている日本ではあまり効果がでておりません。
デジタル通貨がより普及することで、有効な経済政策を打ち出せるようになります。
ユーザーの利便性が確実に向上するデジタル通貨にデメリットがあるのでしょうか?
中央銀行デジタル通貨(CBDC)のデメリット
送金問題
法定通貨をデジタル化する場合にも実はデメリットが存在しています。
法定通貨のデジタル化が始まれば、現金からデジタル通貨への交換が行われますよね。
ブロックチェーンでデジタル通貨を発行した場合、国中の送金を扱うことになるので、大量の送金処理に耐えうる通信設備を整える必要がでてきます。
時価総額が最も高いビットコインですら、送金数が増加すると送金遅れが出てしまうという問題を抱えていることを考えると、国中の送金処理に対処できるシステムを構築するのには骨が折れそうです。
大変な労力と管理コストをかけることになるでしょう。
実際にプログラミング大国のインドでは、デジタル通貨の開発を率先して行ってきていました。
インド準備銀行は、2018年8月に国内で利用される中央デジタル通貨の需要とその妥当性を調査するグループを設立し、デジタル通貨の可能性を探っていました。
経済政策の効率化やマネーロンダリングの防止にもデジタル通貨は役に立つという結論を出したものの、単純に技術力が不足しているようで、開発をストップさせています。
プログラミングに強い国と呼ばれているインドですら難しい技術が必要となるのがデジタル通貨です。
民間銀行の消滅
中央銀行によるデジタル通貨の発行が進めば、中央銀行の利用者が格段に増えることが予測されます。
そうなると、民間銀行の数は減っていく一方になります。
既に仮想通貨の普及に伴い徐々に送金業務を奪われつつある民間銀行は、中央銀行がデジタル通貨を発行することによって益々シェアを奪われてしまうことになります。
デジタル決済に対応できない高齢者
デジタル通貨は使いこなすことができれば、確かに便利なシステムではありますが、生涯ずっと現金で売買をしてきたお年寄りの方からすると、理解し難いシステムであるということも間違いありません。
よくスマホの扱い方がわからないからガラケーを使い続けるというお年寄りの方を見かけると思いますが、それと同じように、デジタル通貨に対応できないお年寄りの方が取り残されてしまいます。
もし、そういった取り残されたお年寄りの方がいる状況でデジタル通貨の普及が進んでしまうとどういったことが考えられるでしょうか?
お店によっては、デジタル通貨でのお会計でしか対応しないというお店もでてくるでしょう。
実際に、スウェーデンでは小売業者の50%近くが2025年までに現金の受け入れをやめることが予想されています。
そうなってしまうと、デジタル通貨を使用することができないお年寄りの方は買い物ができるお店がかなり絞られてしまいます。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)が今後の経済や金融に大きな影響を及ぼす?
デジタル通貨の発行はユーザーに利便性をもたらすという反面、中央銀行のデジタル通貨が経済に悪影響を及ぼすという専門家の意見もあります。
実際に韓国の研究者が、デジタル通貨が商業銀行における流動性にどのように影響を与えるのかモデル化した研究レポートを提出しています。
その研究レポートによれば「もし人々が理論的にデジタル通貨と呼べるものを利用できるようになった場合、商業銀行への預金が減り、商業銀行は現金不足に陥る可能性がある。そのような状況では、商業銀行は最終的にローンの金利を上げることで現金不足を補うしかない」とのこと。
「これは、金融の安定性に悪影響があり、預金者に支払うための預金が不足する取り付け騒ぎが起こる可能性が高まります」という研究レポートの結論がでています。
人々の暮らしが楽になるようなシステムを次々に単純に導入すればいいというわけではないようですね。
実際に韓国もそうですが、インドでも法定通貨のデジタル化は一度立ち止まっての検討をされているようです。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関するまとめ
いかがでしたでしょうか、ここまで中央銀行デジタル通貨について解説をしてきました。
デジタル通貨を使用するメリットもありますが、注意深く検討する必要があるリスクも考えられました。
現代社会では、硬貨や紙幣といった現金と電子マネーや仮想通貨が混乱をまねかない割合で混在しています。
その割合というのを、少しずつ見極めながら調節していく必要がありそうですね。
今後のデジタル通貨の動きが楽しみです!