
仮想通貨は未来のデジタル通貨として注目を集める一方で、ユーザーの拡大による様々な課題も抱えています。
その一つが「スケーラビリティ問題」です。
仮想通貨の取引量が拡大しトランザクションが多くなると、システムがデータ量に対応しきれず、処理速度の低下などの問題が発生する可能性があります。
これは、仮想通貨に対する信頼性を大きく揺るがすことになりかねません。
送金スピードや処理能力が劣れば、通貨としての価値に対する懸念が高まり、信頼性や実用性に疑いが持たれるようになります。
そうなれば、仮想通貨市場全体の発展が阻害される可能性があります。
このスケーラビリティ問題を解決する方法として、「ライトニングネットワーク」という技術が注目されています。
複数の仮想通貨で実装が計画されており、実際に既に導入している通貨もあります。
ライトニングネットワークとは
ライトニングネットワークとは、仮想通貨のブロックチェーン上で発生するスケーラビリティ問題を解決する技術として開発されたものです。
ライトニングネットワークとは、ブロックチェーン(ほとんどの場合ビットコイン)上で動作する「セカンドレイヤー」ペイメントプロトコルである。ライトニングネットワークは理論的には参加ノードの間での高速なトランザクション処理を可能にし、またビットコインのスケーラビリティ問題の解決策と謳われている。
引用:Wikipedia
ブロックチェーン上に書き込まれる取引データ(トランザクション)は、一つのブロックごとに数の制限があります。
書き込まれるデータ量が多くなれば、処理能力の低下が起こり、送金遅延などの問題が発生する可能性があります。
仮想通貨の送金依頼をしても承認がなかなかされず、反映まで時間がかかるような事態になれば、スムーズな取引に悪影響を及ぼします。
このことは仮想通貨取引の停滞につながる憂慮すべきことです。
また、ユーザーにとって取引手数料が高騰する弊害もあります。
手数料の高騰もまた、仮想通貨市場から人が離れていく要因になる可能性があります。
取引量の多いビットコインに送金遅延のような状況が起これば、仮想通貨全体の信頼性が大きく低下する原因になります。
これが仮想通貨のスケーラビリティ問題ですが、解決する方法として考案されたのがライトニングネットワークです。
ライトニングネットワークは、ブロックチェーンの外(オフチェーン)で取引を行い、ブロックチェーンにはまとまった結果だけをのせる仕組みです。
このことにより、送金のスピードアップ、処理能力の向上、送金手数料の削減、少額決済(マイクロペイメント)の効率化などのメリットがあります。
ユーザーにとっては、ライトニングネットワークが実装された仮想通貨を利用することで、より高速で手数料も安く、1円以下の少額取引も効率的に行うことが可能になります。
ライトニングネットワークは仮想通貨の機能性や安定性を飛躍させる技術であり、仮想通貨全体の発展に大きなプラスの影響を及ぼす期待ができます。
ライトニングネットワークの問題点
技術的価値の優れたライトニングネットワークですが、導入にあたっては懸念点も指摘されています。
主な問題点について3つ書いてみましょう。
中央集権型になる可能性
仮想通貨は、管理者のいない非中央集権的なシステムに特徴があります。
しかし、ライトニングネットワークを導入することで中央集権的になり、仮想通貨本来の特徴とは異なるものになる懸念が指摘されています。
ライトニングネットワークの特徴は、結びつきのないもの同士の取引を可能にする点です。
オフチェーンを利用した技術である「ペイメントチャネル」は少額でスピーディーな決済が可能ですが、二者間の取引に限定されます。
人が変われば別のチャンネルを作らなければならず、人数が増えればそれだけスケーラビリティ問題の発生するリスクが高まります。
ライトニングネットワークは、スケーラビリティ問題を解決し、複数のペイメントチャネルをネットワーク化することでチャネルが開いていない者同士の取引も可能にしています。
つながりのない者同士でも、その人がつながっているチャネルを経由して、複数の取引が可能になるシステムです。
これは活発な取引を行う上で大きなメリットですが、一方で中央集権化になる懸念も秘めています。
なぜなら、つながりのない者同士の取引では、中継する人が必要になるからです。
この中継的存在になる人物が、資金力をもとに多数の経路を独り占めするような事態になれば、その人の裁量が強く反映される中央集権的になる可能性があります。
つまり、特定の人による実質的な管理が行われる可能性があるということです。
もしその人物に悪意があれば、ネットワーク全体に悪影響を及ぼす危険性があります。
Segwitに対応する必要がある
ライトニングネットワークを実装するためには、「Segwit」に対応した仮想通貨であることが条件になります。
Segwitとは、データをブロックチェーンから切り離して処理する技術です。
ブロックチェーンに書き込まれる取引データのサイズを圧縮することにより、高速の送金処理が可能になります。
ライトニングネットワークではSegwitの実装が必要になりますが、その条件に合致した仮想通貨の数は非常に少ない状況です。
現状では、ビットコイン、ライトコイン、モナコインがそれに当たります。
ライトニングネットワークを導入しようとすれば、まずSegwitに対応する必要があるため、機能導入のハードルは高くなります。
セキュリティ問題
ライトニングネットワークは、セキュリティの脆弱性が指摘されています。
ハッキング被害を受ける可能性や、最悪の場合には資金損失の危険性も指摘されており、まだその対策が十分とは言えない状況です。
オフチェーンで管理するライトニングネットワークは、外部からの攻撃にさらされる危険性が高くなります。
今後はセキュリティ問題をいかに解決していくかが、ライトニングネットワークの乗り越えるべき課題の一つです。
ライトニングネットワークとライトコインの関係は?
ライトコインとの関係で、ライトニングネットワークが話題になることも多いです。
ライトコインは時価総額の上位に位置し、歴史のあるメジャー通貨です。
過去にライトコインは、ライトニングネットワークの導入テストに成功しており、今後の本格的な実装が期待されています。
ライトコインは、ビットコインと機能性が似ている通貨です。
しかし、ビットコインよりも実用性が高く、利用価値の高い通貨という評価があります。
ライトコインの特徴は、ビットコインに比べて処理能力が優れ、送金スピードが速い点です。
ライトコインは、ビットコインの弱点を補う通貨として評価があり、今後ライトニングネットワークが実装されれば、ライトコインの持つこの機能性がさらに充実するでしょう。
少額決済においても効率的な活用が可能になり、ライトコインの実用性が広まる期待ができます。
ライトコインの優れた機能性は、ライトニングネットワークとの親和性も高いと考えられます。
ライトニングネットワークが実装されるのはいつ?
ライトニングネットワークは、ビットコインでは既に実装されています。
2018年5月、世界初のビットコイン/金の交換所であるVaultoro.com はmainnet でのライトニングネットワークでの入金を承認した。
2018年7月1日、決済処理会社 CoinGate はライトニングネットワーク支払いを承認するためのサービスをマーチャント向けにリリースした。
引用:Wikipedia
ライトコインに関しても導入テストを実行しており、近い時期に実装される可能性は高いと考えられます。
また、将来的にライトニングネットワークの実装を計画している仮想通貨は複数存在します。
このような状況の中で、技術のさらなる進歩が期待できます。
ライトニングネットワークのセキュリティに対する疑念も、今後の取り組みによって改善していく可能性が高いです。
ライトニングネットワークに対する評判(口コミ)
ライトニングネットワークに対する評判を、Twitter上から3つ拾ってみました。
高速になるが、中央集権化やセキュリティが甘くなるリスク
ライトニングネットワークは、メインのブロックチェーンの他に、サブのブロックチェーンを用意して、それを使って決済する技術。
早くなるが、中央集権的になったり、セキュリティが甘くなるリスクがある#ライトニングネットワーク
— SNS職人 (@SNS_Craftsman) 2019年11月8日
ライトニングネットワークのメリットと危惧する点を指摘する声です。
ライトニングネットワークなどの技術導入への期待で、時価総額が上昇
仮想通貨ライトコイン、時価総額「4位」へ浮上|ライトニングネットワークと新匿名技術の導入に注目 【CoinFan コインファン】
上昇したのには追加機能等2つの理由が!!https://t.co/rAqm0HyXof#仮想通貨 #ライトコイン #LTC— CoinFan(コインファン) (@CoinFan_club) 2019年11月7日
ライトコインの時価総額が、ライトニングネットワーク実装への期待から上昇したという声です。
(この時は時価総額4位になりましたが、2019年11月現在は第6位です)
支払いに、ビットコインのライトニングネットワークを利用した少額決済が可能
Fold社は7月10日、支払いプラットフォームにビットコインのライトニングネットワークを利用した少額決済が可能になったことを発表しました。対応店舗はAmazonやスタバ他。
各店舗での店頭決済とオンライン決済の両方に対応するということだそうです。— いーぐる《幸》 (@U8YH99bGG2GwCJK) 2019年7月11日
ライトニングネットワークを実装した仮想通貨の利用が実際に始まったという声です。
ライトニングネットワークのまとめ
ライトニングネットワークは、オフチェーンを活用することで送金スピードや処理能力の向上を可能にした優れた技術です。
取引処理が拡大するため、仮想通貨市場に参入する人が多くなり取引が活発になっても、それに対応することが可能になります。
また、複数のペイメントチャネルをネットワーク上でつなげることによって、ユーザー同士の取引を効率的でスムーズにすることができます。
少額決済においても効率的な取引が可能であり、今後の仮想通貨利用を促進する大きな技術として期待できます。
仮想通貨のスケーラビリティ問題を解決する技術である一方で、ライティングネットワークには中央集権化やセキュリティなどの課題があります。
今後は、これらの問題を解決することが重要になります。
懸念点が解決されればユーザーの安心感が高まり、仮想通貨市場の発展に貢献する技術と考えられます。
またライトニングネットワークを実装している仮想通貨の信頼感が高まれば、その通貨の価格高騰の可能性もあります。
新しい技術は今後も次々に開発されることが予想されるため、それらの技術との比較においてもライトニングネットワークを捉えることが大切です。