仮想通貨ニュースを見ていると、何かと話題になる『機関投資家』ですが、仮想通貨市場への影響だけでなく、様々な相場において、機関投資家が市場に影響を与える可能性は高いです。
そして、機関投資家が動けば、市場は暴騰したり、暴落したりと、個人投資家が市場に与える影響はすさまじい威力をもっています。
本記事では、「仮想通貨と機関投資家」について網羅的に解説しています。
- 仮想通貨にとって機関投資家がどのような存在なのか?
- 機関投資家が仮想通貨市場に参入するのはいつか?
- 機関投資家の種類・投資手法の違いを知りたい
このような疑問に答えますので、是非最後までご覧ください。
仮想通貨の機関投資家とは
そもそも「機関投資家」とは、多くの資産家(個人)からお金を集め それを運用し利益を出す「企業」もしくは「団体(以後 企業で統一)」の事です。
機関投資家(きかんとうしか、英語: institutional investor)とは、個人投資家らの拠出した巨額の資金を有価証券(株式・債券)等で運用・管理する社団や法人である。保険会社、投資信託、信託銀行、投資顧問会社、年金基金など。財団もふくむ。証券市場に対する一種の圧力団体として、ビッグバンを実現したりオフショア市場を開拓したりした。海外機関投資家の日本株式保有率は1990年に4.7%でしかなかったのが、2014年に31.7%を記録した。欧州諸国においても、規模などに差があるにせよ、機関投資家による買収の時期と傾向と弊害は似ている。2017年現在、世界の受託資産は67兆USドルを超えているが、ブラックロックとヴァンガード(Vanguard Group)だけで11兆ドル以上を運用している。
引用:Wikipedia
個人投資家は、自身が保有している資産を自身で運用し利益獲得を目指すのに対し、機関投資家は「儲けたい」と考えている個人資産家からお金を集め運用するため、その投資規模は個人投資家の比ではありません。
なお、機関投資家には様々な種類があり、月4桁円から投資できるものもあれば、7桁円からしか投資できないいわゆる「ヘッジファンド」なども存在します。
詳しくは「仮想通貨の機関投資家|種類について」にて解説しています。
機関投資家の定義はあいまいで、法律等でしっかりと定められているわけではありませんが、一般的には、「多くの投資家からお金を集め、その運用を委託される機関(企業)」のことを意味します。
以後、本記事でもそのような意味合いで「仮想通貨と機関投資家」について解説を進めます。
すなわち、仮想通貨の機関投資家とは、多くの資産家から仮想通貨を集め それを運用し利益を出す「企業」の事です。
仮想通貨市場における機関投資家参入の効果
仮想通貨市場における機関投資家参入の効果として、もっとも代表的なものは「仮想通貨の市場規模拡大」です。
先述した通り、機関投資家は多くの資産からから仮想通貨を集め 運用するため、個人投資家とは比較にならないほどの投資規模を有します。
すなわち、1つの機関投資家が仮想通貨市場で取引を行うだけで、個人投資家の数百~数万倍の資金が仮想通貨市場に流入するのです。
また一般的に、多くの資金が市場に流入することにより市場規模が拡大すると、以下のような効果も表れます。
- 仮想通貨価格の上昇
- 時価総額の上昇
- 流動性の増加
結論から言えば、今後、仮想通貨市場における機関投資家参入の動きは強まっていくと予想されます。
先物取引の実現や、仮想通貨ETFの議論が世界規模で進んでいるのが、その兆候ですね。
詳しくは「仮想通貨の機関投資家|機関投資家の参入はいつ?」にて解説していますので、そちらを参照ください。
仮想通貨|市場規模の現状と推移
2019年6月現在、仮想通貨の市場規模は30兆円弱程度だといわれています。
30兆円はとても大きな数字に見えますが、「市場規模」という観点から言うとそれほど大きな数字ではありません。(下記参照)
市場規模比較
以下の表は、野村資本市場研究所が作成した東京・ニューヨーク等の証券取引所の市場規模など基に作成した、仮想通貨の市場規模を比較したものになります。
東京証券取引所の市場規模が677兆円、NY証券取引所の市場規模が2500兆円であるのに対し、仮想通貨の市場規模は30兆円程。
「仮想通貨」という市場はまだまだ、発展途上であることが確認できますね。
仮想通貨市場規模推移
続いて、コインマーケットキャップのデータを基に作成した仮想通貨市場規模の推移の表です。
※2018年3月以降は大きな変動が見られなかったため、半年ごとの推移を表示。
ご覧の通り、順調に市場規模を伸ばしていった仮想通貨は、2017年末~2018年にかけて「仮想通貨バブル」を迎えたため市場規模が90兆円以上まで拡大。
その後は、大幅に規模が縮小したものの、2018年末~2019年6月現在までにかけて、少しずつ回復しているというのがこれまでの推移となています。
仮想通貨のおける機関投資家の種類
本記事ではわかりやすく「仮想通貨の機関投資家」という表現を用いていますが、「現存する機関投資家が、仮想通貨にも投資をし始める」というのが正確な表現です。
すなわち、「仮想通貨専門の機関投資家」がいるわけではなく(一部には存在)、機関投資家の資産運用手段としてあらたに「仮想通貨」が加わるということですね。
以上を踏まえたうえで、続いては「機関投資家の種類」について解説します。
具体的に、「機関投資家」として扱われる企業の種類は以下の通り。
- 生命保険会社
- 損害保険会社
- 投資信託会社
- 投資顧問会社
- 信託銀行
- 年金基金
生命保険会社・損害保険会社
想像がつくかもしれませんが、生命保険会社や損害保険会社の場合は、保険加入者が定期的に支払っている料金を元手に資産運用を行います。
保険会社を子会社に持つグループとして有名なのは、SBI・朝日・アクサ・au などですね。
投資信託会社・信託銀行
「機関投資家」と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのがこの「投資信託会社・信託銀行」でしょう。
投資信託会社は、投資家から「申込金・手数料」などを集め株や債券に投資・運用します。
近年では、投資家から直接集金するのではなく、郵便局や証券会社や銀行などの、いわゆる「販売会社」を通じて集金するケースが多いです。
投資顧問会社
投資顧問会社は表向きには「投資家に投資の助言を行う」会社ですが、投資家から資産を預かり、投資顧問会社が実際に運用するケースがほとんどです。
また、「投資助言業務」には主に以下4種類がありますが。
- 相談形態(投資家の相談に応える)
- 指図形態(投資家に銘柄・日時などを指図)
- 一括送信形態(助言をメールなどを用いて一括送信)
- ソフトウェア販売形態(市場分析ソフトなどの販売)
資産運用を一任したい投資家が利用するのは主に「相談形態」か「指図形態」だとされています。
年金基金
年金基金は、年金給付を行う代表的な機関で、年金加入者が支払った資金を運用します。
年金基金の場合、基本的には運用業務の一部を信託会社・金融機関・生命保険会社・農協などに委託し、資産運用を行います。
仕組みとしては、先述した「投資銀行」とほぼほぼ同じで、違うのは運用資金の元手となるのが「年金加入者が支払った資金」という点のみです。
仮想通貨における機関投資家の投資手法の違い
機関投資家によって、資産運用の方法(ファンド)には様々な種類があります。
中には「企業再生ファンド」や「不動産ファンド」などもありますが、本記事では「仮想通貨投資を行う(可能性のある)ファンド」のみをピックアップし、ご紹介します。
今回紹介するファンドは以下の3つ。
- ヘッジファンド
- 証券投資信託
- 商品ファンド
ヘッジファンド
最も有名なのがこのヘッジファンドかもしれませんね。
ヘッジファンドが投資を行うのは、「上場株式」「債券」「デリバティブ」「短期金融商品」などで、「仮想通貨」も投資対象となる見込みです。
ヘッジファンドは基本的に「投資のオールラウンダー」ですので、様々な投資商品にアクセスします。
またヘッジファンドは「いかにより大きな利益を出すか」にコミットし、資産運用を行います。
よって、利回りの良い投資商品や、仮想通貨の様にボラティリティの高い投資商品に短期投資することも少なくなく、「売り」「買い」どちらからでも取引できるのが特徴です。
悪く言えば「大きなリスクを背負った投資を行っている機関」となりますね。
加えて、ヘッジファンドにへの投資は[9,10桁円~]が当たり前の世界ですので、富裕層・企業が主な顧客となります。
証券投資信託
証券投資信託はその名の通り、「上場株式」「債券」「デリバティブ」「短期金融商品」「ファンド」などへ投資を行います。
投資対象がヘッジファンドと被る部分も多く、同じく「仮想通貨」への投資も行われる見込みです。
ヘッジファンドと証券投資信託の決定的な違い、
それは、ヘッジファンドは様々な投資家から集金したお金をまとめて運用するのに対し、証券投資信託はあくまで「金融商品」の販売を行うファンドだという点です。
また、ヘッジファンドは富裕層・企業が主な顧客なのに対し、証券投資信託は[4,5桁円~]からの投資が可能なので中・低所得者が主な顧客となります。
【ヘッジファンド】
投資家は資産をファンドに預け、運用を一任。運用の仕方等に口出しすることはできない。短期投資。
【証券投資信託】
投資家は自らの資産を使い、証券投資信託が販売する金融商品を購入し、ファンド側はその注文通りに資産を運用する。積立などの長期投資。
商品ファンド
商品ファンドは、「原油」「ガソリン」「天然ガス」などの自然エネルギーや「金」「銀」「大豆」「トウモロコシ」など、様々な「商品」に投資を行います。
商品ファンドの場合、仮想通貨そのものに対する投資は行わずとも、仮想通貨を含んだ金融商品(仮想通貨ETFなど)に投資を行う見込みです。
実際、商品ファンドの中には「金」「銀」などを含むETFに投資を行っている企業も多いため、仮に仮想通貨ETFが実現すれば、商品ファンドの投資対象となる可能性が高いですね。
仮想通貨の機関投資家の参入はいつ?
ここまで、「機関投資家の参入は仮想通貨市場規模拡大につながる」との解説をしてきましたが、気になるのは「機関投資家はいつ参入するの?」という点ですよね。
結論から言うと、「機関投資家はすでに参入を始めている」です。
この結論には、しっかりとした根拠があります。
Fidelity(フィディリティ)が機関投資家を対象とした調査を実施
2019年5月3日、アメリカの大手金融企業フィディリティが、ヘッジファンドやファミリーオフィスなどの計441の機関投資家を対象に調査を実施したことを発表。
その調査結果を、公開しました。
Institutional investments likely to increase over next 5 years. New #digitalassets research: https://t.co/3Lq5h5ITbT pic.twitter.com/9FTypatN8b
— Fidelity Digital Assets (@DigitalAssets) 2019年5月2日
調査の概要は以下の通り。
- 調査期間:2018年11月26日~2019年2月8日
- 調査対象社数:441の機関投資家
- 調査対象:ヘッジファンド,ファミリーオフィス,基金,etc...
Fidelity(フィディリティ)による機関投資家への調査結果
フィディリティの調査結果によると、全体の22%の機関投資家がすでに仮想通貨を保有しているといいます。
ヘッジファンドや裕福な資産管理会社などが仮想通貨に対する興味・関心がいかほどなのかを調査するために、同社はおよそ450社にインタビューを実施。
その調査結果では約22%が「仮想通貨を既に保有している」とし、今後5年のうちに仮想通貨のその配分率を現状の2倍ほどに拡大することを検討していることも分かった。
引用:ITメディア
また、調査に応じた約半数(47%)の機関投資家が「仮想通貨は革新的なテクノロジーである」との認識を示しており、中でもフィナンシャルアドバイザー(74%)とファミリーオフィス(80%)が、仮想通貨の特性を最も好意的に受け止めていることが分かりました。
機関投資家が仮想通貨投資に参入しずらい理由
先述した通り、約2割の機関投資家がすでに仮想通貨投資を行っている事実がありますが、その一方で、約8割の機関投資家は仮想通貨投資を行っていないという事が分かります。
これについてもフィディリティの調査を引用し解説すると、彼ら(8割)が仮想通貨投資を行わない理由は以下4つです。
- 価格が不安定
- 規制に関する明確さの欠如
- 実績の少なさ(信頼の無さ)
- ファンダメンタルズの欠如
たしかに、上記4つは仮想通貨市場の問題点としてしばしば取り上げられますが、一部そのソリューションが生み出されつつあるのも事実です。
例えば、「価格が不安定」という問題点は、「先物取引」でボラティリティを抑えれば解決することができます。
「規制に関する明確さの欠如」という問題点に対しては、米SECを含め、各国政府の下、関連法整備が急ピッチで進行中です。
また、実績の少なさからくる「信頼性の無さ」は、仮想通貨ETFの誕生によって解決する可能性が高いです。
まとめ
以上、仮想通貨と機関投資家についての解説でした。
先ほどは、「機関投資家が仮想通貨市場に参入するのはいつか?」という問いに「すでに参入している」と答えましたが、
「さらに参入してくるのはいつか?」という問いに対する答えは「ETFや先物取引などの金融商品が出来上がる頃」もしくは、「仮想通貨関連法整備の世界水準がシェアされる頃」です。
上記の通り、「機関投資家の参入時期」を把握するためには、新たな「仮想通貨ETF誕生」や「規制関連のニュース」の把握は必須ですので、日ごろからこまめに仮想通貨メディアをチェックすると良いでしょう。