高い利回りを狙い巨額の資金を運用するヘッジファンド。
ヘッジファンドによる仮想通貨市場への参入は市場拡大の「鍵」になると見込まれており、2019年現在ではヘッジファンドを含む多くの機関投資家が仮想通貨市場への参入を始めています。
本記事では、「仮想通貨とヘッジファンド」について網羅的に解説しています。
- ヘッジファンドとはそもそも何か?
- クリプト系ヘッジファンドの種類とは?
- ヘッジファンドによる仮想通貨投資の現状を知りたい
このような疑問に答えますので、是非最後までご覧ください。
ヘッジファンドとは?
ヘッジファンドとは、株・債券・仮想通貨などの様々な投資商品を組み合わせることで高い運用利益を獲得しようとするファンド(投資手法の1つ)です。
「ヘッジファンド」は言葉の定義としては「機関投資家」の1つに含まれますが、機関投資家は長期的かつ低コストな投資運用を行うのに対し、ヘッジファンドは短期的かつ高コストな投資運用を行うため、一般的に両者は分けて扱われることが多いです。
機関投資家とは
機関投資家とは、複数の個人投資家から資金を集め、その投資家に変わり 集めた資金を運用することで利益を出す企業・社団・法人のことです。
多くの投資家から資金を集るため、その投資規模は個人投資家の比ではありません。
機関投資家の種類・仮想通貨との関連などについては下記の記事にて詳細に解説していますので、是非本記事と併せてご覧ください。
仮想通貨ヘッジファンドとは
仮想通貨ヘッジファンドとは、「仮想通貨投資」を中心としたヘッジファンドのことです。
仮想通貨ヘッジファンドは「クリプト系ヘッジファンド」とも呼ばれ、仮想通貨市場が飛躍的に拡大した2017年初頭頃から急激に増加したことで注目を集めました。
仮想通貨ヘッジファンド(投資手法)には主に6つの種類(下記参照)があり、現存する多くの仮想通貨ヘッジファンドは「リキッド・ベンチャー」と「トレード」の2種類を採用しています。
1.リキッド・ベンチャー(トークンに投資)
2.トレード(仮想通貨トレーダー、ヘッジファンド・マネージャー)
3.AI(人工知能)・クォンツ(計量的に銘柄を評価する手法)
4.ファンド・オブ・ファンズ(優良ファンドに分散投資するファンド)
5.トークン・バスケット(複数のトークンをまとめて一つのファンドと見なす)
6.パッシブ・クリプト・インデックス
仮想通貨の投資信託とヘッジファンドの違い
両者の決定的な違いは、両者の投資運用目標がそれぞれ「相対収益(投資信託)」と「絶対収益(ヘッジファンド)」だという点です。
投資信託の相対収益とは
相対収益を目標とした投資は、獲得収益が ある一つの指標(ベンチマーク)と同じ値動きを目指すことが最重要課題となります。
例えば、東証株価指数をベンチマークとしている運用会社でインデックス投資を行った場合は、東証株価指数が10%高騰すると、自分の資産も10%上昇します。
逆に5%下落した場合は、自分の資産も5%減少します。
このような投資手法は「インデックス投資」と呼ばれており、何を指標とするかは運用会社によって異なりますが、日本株式の場合は以下のような指標を用いるのが一般的です。
- 東証株価指数
- 日経平均株価
インデックス投資のインデックスとは日本語で「指数」を意味しており、基本的に「指数」はその市場の平均値とみなされることが多いです。
すなわち、相対収益を目標としたインデックス投資の場合、「市場平均以上の利回り」を出すことができれば好成績というわけです。
ヘッジファンドの絶対収益とは
絶対収益を目標とした投資は、いつ何時たりとも収益を出すことが最重要課題となります。
インデックスが上昇すれば資産も同じ程度上昇し、逆に下落すれば資産も減少するような相対収益に対し、絶対収益を狙うヘッジファンドは市場が上昇しても下落しても利益を出す運用方法です。
このような投資手法は「アクティブ投資」とも呼ばれています。
- 相対収益:インデックスが上昇すれば資産増、インデックスが下落すれば資産減。
- 絶対収益:インデックスが上昇しようが下落しようが、資産増。
ただ、ヘッジファンドに対する「必ず利益を出す(確証)」という認識は間違いで、あくまでも「必ず利益を出すことを目標としている運用方法」というのが正確な表現です。
ヘッジファンドの特徴
高い投資金額
短期でのハイリターンを狙うアクティブ投資の対象は、主に「富裕層」と呼ばれる個人や企業で、投資家は高額な投資資金を用意する必要があります。
このように、通常1万円程度から開始できるインデックス投資に対し、数千万円単位からしか開始できない点もアクティブ投資の大きな特徴となります。
高いボラティリティ
先述した通り、ヘッジファンドは「短期集中」で収益獲得を狙います。
短期で収益を獲得する方法は主に2つ。
- 巨額の資金を投入し割合ごとの獲得収益を増やす
- ボラティリティの大きい金融商品に投資し獲得収益の機会・割合を増やす
※前者については先述しているので割愛
上記の理由からヘッジファンドは、基本的に「ボラティリティの大きい金融商品」を投資対象としています。
具体的には、株式・先物取引・仮想通貨などが主な投資対象となります。
私募形式での資金調達
不特定多数の個人投資家から「公募形式」で資金を調達し運用する投資信託に対し、ヘッジファンドは「私募形式」で資金を調達します。
具体的な線引きは、調達先の個人・企業数が50以下であれば「私募形式」、それ以上であれば「公募形式」となっています。
ヘッジファンドが私募形式をとっている理由は主に3つ。
- 公募だと規制が厳しい
- 富裕層・企業の数が限られている
- 多数からの資金調達をする必要が無い
公募形式の資金調達をする際は、情報開示義務やリスク・レバレッジ管理規制、運用手法の制限など、様々な規制がかけられます。
そのような規制下の中では投資手法の自由度が減り、いつ何時たりとも利益を出す「アクティブ投資」を行うことが難しくなるため、ほとんどすべてのヘッジファンドは「私募形式」で巨額の資金を調達しています。
仮想通貨ヘッジファンドのメリット
リターンが大きい
ヘッジファンド最大のメリットは、やはり「絶対収益」を目指すアクティブ投資によるリターンが大きいことです。
リターン、すなわち利回りの高さはヘッジファンドごとに異なりますが、世界最高のヘッジファンドとされている「オデイ・ヨーロピアン」の利回りは脅威の53%。(1億円を投資すれば、1年で1億5300万円にまで増える計算)
富裕層が短期間で大きなリターンを狙うなら、ヘッジファンド投資一択ですね。
資産運用をプロに任せられる
資産運用をプロに任せることができる点もヘッジファンドの大きなメリットです。
インデックス投資を行う投資信託の場合、投資商品の選択は投資家自身が行います。
ゆえに、本気で収益を獲得するための投資であれば、市場の見方や資金の分散方法など、様々な投資知識を身につける必要があります。
対してアクティブ投資を行うヘッジファンドの場合は、投資商品の選択や分散方法などはファンドマネジャーと呼ばれる「投資のプロ」が行います。
ゆえに、投資家自身がやるべきことは「お金を出す」ことのみで、知識・スキルの習得は必要ありません。
このように、投資の素人でも、お金さえあれば投資のプロに任せることで大きなリターンを狙えるという点が、ヘッジファンドを利用するメリットです。
仮想通貨ヘッジファンドのデメリット
コストが大きい
絶対収益を目標とするアクティブ投資は、「短期的かつ高コストな投資」とされており、投資家側は高いコストを割かなければいけないことが多いです。
アクティブ投資を行う際にかかるコストの詳細はヘッジファンドごとに異なりますが、一般的には以下2つだとされています。
- 管理手数料(1~3%)
- 成果報酬(運用収益の15~40%)
管理手数料はいわばデフォルト料金で、ファンドを運営していくのに最低限必要な収益にあたります。
管理手数料はヘッジファンドだけでなく、どの機関投資家も設けている料金です。
成果報酬はヘッジファンド特有の料金で、「運用収益のうち何%」という形式で価格設定されているケースが多いです。
例えば、仮に成果報酬40%のヘッジファンドで5000万円の利益を得た場合、投資家は [管理手数料+2000万円] をヘッジファンド側に支払う必要があります。
情報の開示義務が無い
先述した通り、ヘッジファンドの資金調達方法は「私募形式」であるため、基本的に「情報開示義務」が存在しません。
すなわち、自分の資金がどんな資産にどれだけ投資されいて、どれほどの収益が見込めるのかなど、投資信託であれば把握可能な情報も、秘匿されることが多いです。
ヘッジファンドによっては情報開示を行う企業もありますが、圧倒的なマイノリティとなっているのが現状です。
日本の仮想通貨ヘッジファンド
利回りが高いという意味において、日本で最も優秀なヘッジファンドは「BMキャピタル」というファンドです。
同ファンドはヘッジファンドでは珍しく”長期投資に適したファンド”で、年利回りは10%程度という好成績を残しています。
最も注目すべきはその安定性で、ボラティリティが大きく、低迷が続いた2018年の日本市場でも下落を出さなかったことで大きな注目を浴びました。(下記画像参照)
クリプト系ヘッジファンド2選
Andreessen Horowitz(a16z)
Andreessen Horowitz(以後 a16z)は、資本金3億ドル(約330億円)で設立されたクリプト系ヘッジファンドです。
2018年に設立された a16z は、2019年1月時点で運用総額約27億ドル(約3000億円)を記録し、いまアメリカ・シリコンバレーで最も影響力の大きいベンチャーキャピタルとして注目を集めています。
a16z の正式名称「Andreessen Horowitz」は、同ヘッジファンドを設立したマーク・アドリーセン(Marc Adreessen)氏とベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)氏の名前に由来します。
BlockTower Capital(ブロックタワーキャピタル)
BlockTower Capitalは2017年、金融のスペシャリストである下記2名が共同で設立したベンチャーキャピタルです。
- Matthew Goetz/マシュー・ゲーツ氏(元ゴールドマンサックスのヴァイス・プレジデント)
- Ari Paul/アリ・ポール氏(シカゴ大学の元ポートフォリオマネジャー )
BlockTower Capitalは2017年の仮想通貨バブル期にヘッジファンドを立ち上げ、どの機関投資家よりも早く仮想通貨市場に参入しました。
マシュー氏やアリ氏のような金融・投資のスペシャリストが仮想通貨市場に参入したことで、機関投資家による仮想通貨市場参入の流れが加速。
同キャピタルが仮想通貨市場拡大への流れを作ったといっても過言ではないでしょう。
BlockTower Capitalは、2017年の設立からわずか半年で計2つのICOに参加(下記参照)。
結果、投資総額は6,300万ドル(約70億円)にまで上りました。
- FunFair Technologies(ファンフェア・テクノロジーズ)
- Ripio(リピオ)
ファンフェア・テクノロジーズは、仮想通貨イーサリアム(ETH)のスマートコントラクト機能を搭載した現状世界最速のゲームプラットフォーム「ファン・フェア」を提供する企業。
リピオは、仮想通貨ビットコイン(BTC)の決済プラットフォーム「Ripio」を提供する企業です。
まとめ
以上、仮想通貨とヘッジファンドについての解説でした。
上述した通り、ヘッジファンドは情報公開義務を有していないため、どの金融商品に資金を投入しているのかを投資家側が把握することはできません。
よって、「ファンドを通して仮想通貨に投資したい」のであれば、ビットコインETFや仮想通貨先物取引などの投資商品に、直接投資することをおすすめします。
また、日本にはヘッジファンドのような自由度の高い投資手法が少ないため、本記事をご覧いただいている方の中で「ヘッジファンド投資をしたい」という方がいれば、海外の機関投資家にまで視野を広げてみると良いでしょう。