仮想通貨ブームの加熱により投資家の数は急増しました。
初めて投資する資産が仮想通貨という人も多く、ビギナー投資家が続々と誕生しました。
しかし、仮想通貨を購入する人が投資家ばかりというわけではありません。
中には投資家ではなく投機家と呼ぶほうが相応しいような人も見られます。
投資家と投機家、似ているようですが両者は全く違う存在で、昔から投資はいいが投機はするな、などとも言われています。
では、投資と投機は何が違うのでしょうか?
そして、投機家とはどんな存在なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
投機家とは
投機家とは、株・債券・通貨・不動産などを自己の資金で購入し、売買差益による利潤をめざす人のことです。
投機家の最大の特徴は、目標とされる利潤が非常に大きく設定され、大きな利潤を得るためなら高いリスク受け入れることです。
大きな純益を目指し、極端な売買を行う
いわゆるハイリスクハイリターンのスタンスを取るのが投機家であり、資金を大きく増やせる可能性があるのならば、場合によっては投入する資金がゼロになるリスクをも受け入れます。
投機家は常に大きな利潤を目指すため、その売買行動は極端なものになりがちです。
時として市場に大きな影響を及ぼす
リスクを避けるために資金を分散するよりも、利潤を最大化するために大きなリターンが得られる可能性のある商品に資金を集中するのが投機家であり、その行動は時として市場に大きな影響を及ぼします。
投機家の極端な売買行動により本来想定される値動きを大きく外れるケースは多く、投機家の行動がきっかけとなり価格が乱高下してしまうケースもあります。
投機家は自らが引き起こした行動の結果として表れる値動きをも武器にし、チャンスを見つけて大きな利潤を目指します。
リスクよりもリターンに注目する
市場経済において多くの参加者はリターンよりもリスクに注目します。
リスクを最小化することを第一目標にするのが市場経済におけるセオリーですが、投機家は全く逆の行動を取ります。
リスクよりもリターンを選択するその姿勢は、時として市場に困難を招きますが、高度に発達した現在の国際取引市場においては投機家の存在もシステムに最初から組み込まれているため、現在ではその影響力は縮小傾向にあります。
投機家の動きにより一時的に市場に混乱が生じても修正力が働くため、長期的に見ると投機家の存在が市場を歪めることはありません。
投機家と投資家の違い
投資家と投機家は、期待する利潤の性質や投資判断に違いが見られます。
投資家は将来性に資金を投資する
投資家は、投資対象の将来的な成長に期待して資金を投入します。
株式投資ならば「会社が成長して業績が上がれば株価も上昇し配当収入も得られる」と判断するのが投資家です。
仮想通貨であれば「社会的な信用を獲得し通貨としての実用性が上がれば将来的に価値が上がる」と判断して投資家は仮想通貨を購入します。
投機家は売買損益のみに注目する
一方の投機家は、将来的な成長性や収益期待性などはほとんど考慮しません。
投機家は常に値上がりによる売却差益のみに注目するため、成長性や収益期待性は判断材料のひとつではあっても決定打にはなりえません。
値動きに注目して資金投入を判断する
投機家は対象の値動きに注目して資金投入を判断します。
大きく値上がりしそうだと判断すればリスクを抱えていても資金を注ぎ込みますが、値動きが小さければ確実な値上がりが見込める場合でも資金投入を手控えます。
確実に1パーセント値上がりする商品よりも、不確実だが100パーセント値上がりする可能性のある商品を購入するのが典型的な投機家の行動です。
判断に裏付けはない
投機家の判断に裏付けはほとんどありません。
行動のほとんどは「市場がそのように動いたから」というもので、原因としての理由は考慮せず結果として表れる市場の動きに追従するように資金を動かすのが投機家です。
短期的利益を目指している
そのため投機家の行動は常に短期的利益を目指すものになりがちです。
高騰する期待を込めて長期的な取引を行うこともありますが、ほとんどのケースでは短期的利益を見込める値動きの激しい商品に資金を集中させることを好みます。
投資家は売買行動に慎重
投資家は売買行動に対し慎重な姿勢を見せます。
企業の過去の業績や経営判断、成長見込みやガバナンスなどあらゆる情報を収集分析し、資金を投資するのにふさわしいかどうかを見極めます。
資金を動かす判断も慎重な姿勢が見られ、対象の本質的な価値を見極めてようとするのが投資家に共通して見られる行動です。
投機家は一か八かの勝負を好む
投機家は一か八かの大勝負を好みます。
勝てば大儲け外れれば大損のいわゆるゼロサムゲーム的な姿勢で資金を動かすことから、一回の失敗で致命的なダメージを追ってしまうケースも多く見られます。
投資家の場合は、リスクを回避することを重要視するため、一つの対象に資金を集中させることは少なく、仮に判断が外れて損失が出たとしても運用資金全体に致命的な影響が及ぶことが無いようにポートフォリオを組んでリスクを分散します。
表面的に大きな違いはない
投機家と投資家の違いは、投資判断の基準とリスクへの意識にありますが、実は表面的には投機家と投資家に大きな違いはありません。
投機家と投資家はどちらも特別な資格が必要な職業ではなく、両者を区分しているのは観察して見られるスタイルの違いでしかありません。
「資金を運用し商品を購入して利潤をめざす」という点で両者は全く同じ存在であり、同じものとして扱われることもよくあります。
どちらのスタンスを取るかで決まる
投機家と投資家を決定的に分ける決め手はありません。
投機家と投資家の両方の資質を合わせ持つのが一般的な市場参加者の姿であり、どちらの姿勢がより強く前に出ているかで区分されているに過ぎません。
投機家が投資家的な動きを見せることもありますし、投資家が大きな利潤を目指して投機家のような行動を取ることもあります。
どのようなスタンスを取るかが投機家と投資家の分かれ目なのです。
投機とギャンブルの違い
投機とギャンブルの違いは、投入資金の影響と胴元の存在の二点です。
投機が未来を予想して商品を購入し値上がりによる利潤を期待するのに対し、ギャンブルの利潤は自分の行動が結果に影響を及ぼすことがなく完全に運によって決まります。
大量の投機行動は市場に影響を及ぼす
例えば、ある商品に資金を大量に投入する投機行動が行われた場合、投入された資金は市場に影響を及ぼします。
供給が少なくなれば相場は上昇し、供給過剰になれば相場は下落しますが、どちらのケースも市場参加者である投機家の行動によって市場に動きが起こり将来的な利潤も変動します。
ギャンブルは完全に運任せ
ギャンブルの場合は、資金をいくら投入しても対象に影響が及ぶことはありません。
掛け金が多くなるほど当たりやすくなるギャンブルは存在せず、逆に確率が下がることもありません。
ギャンブルの対象は賭けの対象と切り離されて存在するものなので、その結果は常に独立しています。
提供された情報(例えば競馬ならパドックでの様子協定ならモーターの戦績など)は判断材料になりますが、投機のように投入資金が直接的に影響をおよぼすことはなく、ギャンブルは全ての参加者に対し公平な結果を提供します。
投機家の特徴
資金を集中的に運用する
資金を集中的に運用するのは投機家に共通して見られる特徴です。
大きな利潤をめざす投機家にとって、一度の取引には大量の資金を投入するほうが理にかなった行動となります。
資金を分散させてしまうと一度の取引で期待できる利潤が減ってしまうため、ほとんどのケースで資金を一極集中させます。
リスクに対する許容度が大きい
資金を集中させることでリターンは大きくなりますが、同時に期待が外れたときのリスクも大きくなります。
リスクに対する許容度の置きさも投機家の特徴です。
投資家はリスク回避を最優先しますが、投機家はリターンの最大化を最優先します。
リスクを取って利潤をめざすという点で投機家と投機家は共通点がありますが、どちらに比重を置くかにははっきりした違いが見られます。
短期的な投資を好む
投機家の特徴のひとつが売買期間です。
利潤の最大化をめざす投機家は短期的な投資を好みます。
短期投資は結果が判明するまでの期間が短いため、資金の大半を一回の取引につぎ込む投機家にとっては資金の回転率が上がるというメリットがあるのです。
目先の利益を最優先し、売買頻度が高い
投機家は売買頻度も高めです。
成長を期待して長期的に資金を投入する投資とは異なり、投機では常に目先の利益が最優先されます。
人により判断基準は異なりますが、値上がりの動きが見られたら利潤を確定し、増えた資金を再び投機に投入するというのが一般的な投機家のスタイルです。
仮想通貨は投機?それとも投資?
仮想通貨を購入するのは投機と投資、どちらに該当するのでしょうか。
仮想通貨取引社の多くが高騰による値上がり差益を期待して購入しているという事実を考えると、仮想通貨取引は投機的性質が強いと言えます。
短期利益が狙える投資対象
仮想通貨は他の商品と比べて圧倒的に値動きが激しく、法定通貨では考えられないような値上がりも起きています。
仮想通貨の代名詞でもあるビットコインは発行当初と比べると最大で2千万倍という途方も無い値上がりをしています。
短期的に見ても1週間で3倍近く上昇したこともあり、短期的な利益が狙える絶好の投機対象です。
将来性に期待する人も多い投資対象
一方で仮想通貨という仕組みに将来性を感じて購入する人も多い有望な投資対象でもあります。
仮想通貨の中には、保有する通貨を貸し出して利益を得るレンディングという仕組みがあり、銀行預金の金利と同じように長期安定的な利益を期待する人も少なくありません。
仮想通貨が将来的に法定通貨波の信頼を獲得するという合理的な理由に基づいて購入されていれば、仮想通貨の購入は投資であると言えます。
投機でもあり投資でもある
仮想通貨は投機でもあり投資でもあります。
現状では投機的側面が強いですが、仮想通貨市場の拡大とともに安定的な利潤が見込める投資的側面も強まっています。
市場全体では、投機的な動きが強く極端な値動きが見られるので、ハイリスクハイリターンであるのは事実です。
しかし、特徴的な性質を持った新しい仮想通貨も次々に発行されているため、一攫千金狙いの投機からコツコツ型の投資まで幅広いスタンスでの取引が可能です。
自分自身がもしかして投機家!?投機家の注意点
リスクよりもリターンを優先する
リスクよりもリターンを優先するのは投機家の典型的な特徴です。
ゼロサムゲームに近い高いリスクを許容するようになってしまったら、あなたはすでに立派な投機家です。
勝ち続けているうちはいいのですが、たった一度の失敗で全てを失ってしまう可能性も高くなります。
安定した利潤をめざすならリスクについてもう一度考え直しましょう。
安定資産の比率が低い
現金や国債など安定資産の比率が少なくFXや仮想通貨などリスク資産の比率が高いのが投機家です。
利潤を求めるあまりに資産全体の安定性が欠けている状況には注意が必要です。
都合のいい情報は信じるが都合の悪い情報に耳を傾けない
投機家は都合のいい情報は信じるが都合の悪い情報に耳を傾けません。
リスクを軽視した結果としてネガティブ情報をスルーしてしまいがちですが、そんな姿勢が投機の失敗に結びつきます。
いい情報も悪い情報も等しく収集し分析することが長期的な利益につながります。
まとめ
投機と投資は表裏一体です。
投機的な投資もあれば投資的な投機もあるため一概には判断ができず、投機的な性質と投資的な性質を持ち合わせているのはごく普通のことです。
投機と投資のバランスを考慮し、ある程度のリスクを受け入れつつ利潤をめざすのが投資行動です。
投機は悪とみなす風潮もありますが、本質的には投機は投資スタイルの一つに過ぎません。
現在の仮想通貨市場では投機的な側面が優勢ですが、投資としての視点がなければ長期的な利潤にはつながりません。
投機と投資、両方の視点を持つことが仮想通貨による安定的な利潤の近道なのです。