
長い間、ビットコインの影武者のようなポジションで甘んじているビットコインキャッシュ。
分裂騒ぎの結果、SVとABCという2つのビットコインキャッシュが生まれましたが、どちらが有望なのかよく分かりませんよね。
そこでSVとABCの違いを取り扱っている取引所の数や、メリット・デメリットの点から解説します。
結論から言えばABCの方が期待できるのですが、気をつけたい点もあります。
実際に投資する前に注意点とビットコインキャッシュの展望をまるごとチェックしましょう。
国内取引所で取り扱われているビットコインキャッシュABC!
ビットコインキャッシュがSVとABCに分裂した後、世界の主要な取引所はSVの取り扱いを廃止し、ABCを正式なビットコインキャッシュとして取り扱うと発表しました。
例えばマルタに本拠地を置く大手取引所Binanceは、2019年4月15日に停止し、それに続く形で米国のkarakenが4月16日に停止しています。
仮想通貨取引所大手バイナンスは15日、仮想通貨ビットコインSVを上場廃止すると発表した。ビットコインSVを率いるクレイグ・ライト氏への嫌悪感から、先週末、バイナンスのジャオ・チャンポン(通称CZ)CEOはビットコインSVの上場廃止を示唆していたが、今回、正式発表した。
引用:コインテレグラフ「【正式発表】バイナンス、仮想通貨ビットコインSVの上場廃止を決定|ビットコインキャッシュは高騰」
この動きは日本国内でも同様で、全ての取引所においてビットコインキャッシュといえばABCとなりました。
SVには51%攻撃などのリスクがあった
SVを保有するユーザーには現金が配布されるなど、SVをの取り扱い店は消えることに。
SVは世界的に取引所から取り扱いを停止されましたが、その理由は、時価総額が非常に低いので「51%攻撃」などセキュリティリスクを負いやすいということでした。
SVは時価総額減少に歯止めがかからないと判断
また、連続してハードフォークをする可能性があり、時価総額の減少に歯止めがかからないと判断されたことも問題でした。
2019年6月の時点においても、国内でSVを取り扱っている取引所はありません。
SVを取り扱っているのは海外の取引所のみです。
SVの取り扱いがあるのは海外取引所のみ
海外のSV取扱店を3つほど紹介しましょう。
OKEx

出典:OKEX
ひとつ目はマルタ島に本拠地がある「OKEx」です。
様々な仮想通貨を取り扱っていることで知られ、SVの取引量も多い。
SVも含めて様々な仮想通貨で分散投資したい方は利用するといいでしょう 。
Houbi Global

出典:Houbi Global
SVでレバレッジトレードしたいなら「Houbi Global」がおすすめです。
ただし最大レバレッジが2倍までに制限されていたり、取り扱い通貨が少ない点は注意してください。
Float SV

出典:Float SV
世界で唯一といってもいいSVを基軸通貨として使える取引所が「Float SV」です。
しかし取引の自由度は高くなく、SVとトレードできるのはABCに限られます。
国内取引所の多くはABCを利用している
国内でビットコインキャッシュの取引をするなら、大半の取引所で取り扱われているABCを利用することになります。
ABCはSVに比べてブロックサイズが小さいですが、取引所で困ることは滅多にありませんので安心してABCを使った取引を進めてください。
ビットコインキャッシュのメリット
ビットコインキャッシュには、ビットコインにない魅力的な特徴がいくつかあります。
現在ビットコインキャッシュにはABCとSVがありますが、ここで取り上げるメリットはABCのものです。
ビットコインの知名度を引き継いでいる
ビットコインキャッシュは、ビットコインからハードフォークして生まれた仮想通貨なので知名度が高いです。
仮想通貨は実力も必要ですが、それ以上に知名度が大事です。
知名度が無い仮想通貨の売買は行われないので通貨価格が上がりません。
ビットコインキャッシュは、サービス開設当初ビットコインを持つユーザに同じ枚数のビットコインキャッシュを配りました。
これによりビットコインキャッシュの知名度が飛躍的にアップし、積極的に売買されるようになったのです。
現在は、時価総額ランキングは4位~7位と比較的上位の仮想通貨として定着しています。

出典:コインマーケットキャップ
ABCとSVの分裂騒ぎがあったものの現在は事態が収束しており、ABCがビットコインキャッシュの後継として市場で問題なく受け止められています。
今後も、ABC が新たなビットコインキャッシュとして安定して取引されていくと見られています。
取引処理スピードが早い
現在、ビットコインキャッシュのブロックサイズは32MBまで拡張されています。
ビットコインのブロックサイズは1MBと小さく、ブロックに収まらない取引は次のブロック生成に後回しされるので取引速度が低下していました。
ビットコインキャッシュはブロックサイズが大きいので一度に多くの取引を処理することができます。
従来のビットコインであったトランザクションの詰まりが解消されていますから、処理の効率位がよく、取引速度が早いのです。
リプレイアタックへの耐性がある
ハードフォークした仮想通貨で問題になるのがリプレイアタックです。
リプレイアタックとは、ハードフォークする前の仮想通貨におけるブロックチェーンでトランザクションを作成した後、そのトランザクションをハードフォーク後の仮想通貨におけるブロックチェーンで再度利用することで不正な送金を行うことです。
リプレイアタックとは、ハードフォークを実施してブロックチェーンが枝分かれした際に、悪意のある第三者によって仕掛けられる攻撃の1つです。
ビットコインキャッシュは、トランザクションに独自の署名を付加するのでビットコインのトランザクションをそのまま利用することができません。
このシステムにより、ビットコインキャッシュはビットコインとの独立性を維持したまま安全に取引をすることができるのです。
ブロック生成間隔が安定している
ビットコインキャッシュには、DDA(Difficulty Adjustment Algorithms)と呼ばれるブロック生成難易度を調整するシステムが実装されています。
ブロックの生成に時間がかかっているのを認識するとマイニングの難易度下げてブロック生成に必要な計算時間を短くし、逆に短時間でブロックができれば難易度を上げます。
DDAの実装により取引が安定して行えるようになっています。
また、大手マイナーが意図的にマシンを休ませブロック生成コストを下げようとしても、それを検知してブロック生成難易度を維持するような仕組みがあり、取引の安定化に一役買っています。
ビットコインキャッシュに対する懸念点
ビットコインの問題点を改善した、より完璧な仮想通貨であるビットコインキャッシュですが問題点がないわけではありません。
利便性を高めるために犠牲にしたところもあるのです。
マイニングが中央集権的になる可能性がある
ビットコインキャッシュのブロックサイズは32MBとなっており、ビットコインの32倍です。
32MB分の膨大な計算が必要になったため、それを処理しきるマイニングマシンは非常に高価なものになりました。
現在ビットコインキャッシュで管理上重要になるフルノードを管理しているのは多くが企業です。
大規模なマイング設備が必要になるため個人では対応できません。
ブロックチェーンに大きな影響力を持つフルノードのほとんどを大手企業が管理することは、 ビットコインキャッシュのブロックチェーンネットワークをその大手企業に委ねるのと同じことです。
取引処理の透明性が維持できなくなりユーザー離れを起こす可能性があります。
支払いに利用できる店舗が少ない
ビットコインキャッシュはビットコイン由来の仮想通貨にも関わらず、ビットコインと同じようには使えません。
例えばATM の対応率は、ビットコインだと90%以上あるのに対して、ビットコインキャッシュだと10%程度しかありません。
ビットコインのATMは世界で3500台あると言われています。この1年で4倍の増加です。金融危機が起きれば、そのATMに人々が殺到することもありえます。そして、北アメリカが全体の70%以上のシェアを誇っており、その次に多いのがヨーロッパです。アジアでは、全体の2%以下であり、今後急激に増加することが予想されます。
ビットコインのATM対応率は99.99%であり、それに対してビットコインキャッシュの対応率は10%以下とまだまだ対応していないことがわかります。
引用: NEXT MONEY
実店舗で使えるケースが少ないままでは通貨として広く利用されることは考えにくいでしょう。
ビットコインよりマイニングに費用がかかる
ビットコインキャッシュはブロックサイズが大きいので、ビットコインよりもブロック生成にかかる計算コストが高いです。
マイニングマシンや電気代に多額の費用がかかるので個人がマイニングに参加することができなくなります。
ビットコインがこれだけで勢いがあるのは誰でも手軽にマイニングに参加できたことも大きな要因です。
ハイスペックマシンを用意できる大手しかマイニングできないという点は、ビットコインキャッシュのユーザー増加の障害となる可能性があります。
ビットコインキャッシュの今後予定されている出来事
ビットコインキャッシュとして多くの取引所で扱われているのはABCです。
しかしSVも継続してアップグレードを行っており、無視できる存在ではありません。
そこで2つのビットコインキャッシュで今後何が予定されているか見ていきます。
ABCとSVそれぞれの可能性や方向性について分かるでしょう。
ビットコインキャッシュABC
時期は明確にしていませんが、ABCは以下の3つのカテゴリーについてアップグレードを予定しています。
- スケーラビリティ
- ユーザビリティ
- 拡張性
それぞれのカテゴリーにおいて何が実装中か見ていきましょう。
ABCにおけるスケーリングの改善
秒間100から5,000,000トランザクションを可能にするために各種機能の実装が進められています。
実現すれば一度に大量の取引を処理することができますから、スケーラビリティは飛躍的に向上するでしょう。
それを実現するために現在実装中なのがファスター・ブロック・プロパゲーションです。
graphenと呼ばれるブロックチェーン技術をベースとしており、現在よりも高速にブロックを拡散できるので取引スピードがナスダック並になると言われています。
ABCにおけるユーザビリティの改善
支払いを高速かつセキュアにすることでABCの使い勝手を良くすることを目標に各種機能の実装が行われます。
現在実装が進められているのはフィー・インプローブメントやプレ・コンセンサスです。
前者は手数料などの少額決済を簡単にし、後者はトランザクション速度をアップさせます。
いずれもビジネスに有効なシステムなので、実装されればABCが実社会で利用されるシーンが増えると考えられます。
ABCにおける拡張性の改善
ABCのプロトコルを拡張することでビジネスやソフトウェア開発においてより使ってもらえるようにします。
現在、行っているのは基本的なopcodeの追加です。
さらに現在よりも使い勝手のいいトランザクションフォーマットも開発中です。
ビットコインキャッシュSV
次はSVについて見ていきます。
国内では売買できる取引所がないSVですが、アップグレードは積極的に行われています。
2019年4月に公表されたロードマップでは、今後も継続して機能の追加と改善が図られることが分かりました。
今後のアップデートの内容は次のとおりです。
クエーサーアップデート
2019年7月24日に予定しているアップデートです。
このアップデートの目的はスケーラビリティの改善にあります。
なんとブロックサイズの上限を2 GBに引き上げる予定です。
ジェネシスアップデート
2020年2月4日に予定しているこのアップデートのテーマは原点回帰です。
ビットコインの提案者であるサトシナカモト氏が最初に目指したものに立ち戻ることを目標としています。
そのために、これまで追加された機能の中でサトシナカモト氏の思想に反するものを段階的に取り除いていく予定です。
この他にスクリプトサイズなどいくつかの制限を撤廃するとしています。
ビットコインキャッシュの将来性には期待できる?できない?
現在のビットコインキャッシュは仮想通貨としての魅力に薄いところがあります。
ビットコインやイーサリアムなど主要な仮想通貨に比べて特徴が無いのです。
しかし、今後のアップデートで機能面の改善がされる可能性は大いにあります。
ABCはアップグレードでビジネスに利用されそうな機能追加が予定されているため、今後さらに仮想通貨としての存在感が大きくなる可能性もあります。
SVは思想的な側面が強く感じられますが、ブロックサイズが不足するなど取引は盛んに行われているようです。
今後も現在の規模を維持しながら続いていくことでしょう。
また、ビットコインキャッシュの開設当初から言われていることですが、ビットコインがスケーラビリティの問題に直面した時は一気に価値を上げる可能性があります。
ビットコインキャッシュの今後の将来性のまとめ
ビットコインキャッシュのABCとSVには取引所における扱いに大きな差がありました。
世界的に取引がされているのはABCで、時価総額やユーザー数などを考えるとビットコインキャッシュの取引はABCに絞っても問題無いと言えます。
安定した実力を持っていますが現状では仮想通貨トップ3の座を奪うまでの力はありません。
アップグレードで躍進する可能性はあるものの、ビットコイン次第なのは否めません。
仮想通貨としての機能が向上することで広く社会で利用されることを期待したいところです。
ABCユーザーが期待する、ビットコインのスケーラビリティ問題が顕在化してビットコインキャッシュに利用者が大挙して訪れるというシナリオは実際には考えにくいので 、仮想通貨としてユニークな機能を備えることが価格高騰に欠かせない要素となるでしょう。