昨今、新しい技術やサービスを実現するために仮想通貨を利用するケースが増えてきました。
また、仮想通貨を用いた資産運用も徐々に定着し始めています。
一方、インターネットで不特定多数の人に資金提供を募ることができる、新しい資金集めの方法として「クラウドファンディング」も注目されています。
この記事では、これら2つの新しいものの組み合わせである、仮想通貨を利用したクラウドファンディングであるICOについて、詳しく説明していきます。
クラウドファンディングとは
まずは、クラウドファンディングがどのようなもなのか、おさらいしておきましょう。
インターネットを利用した新しい資金調達法
クラウドファンディングは、インターネットを介して不特定多数の人に資金提供を行う新しい資金調達の方法です。
企業・個人に関わらず資金調達を必要としている人が、資金調達をする目的と目標額をインターネット上に公表して出資者を募ります。
投資家などの出資者は、この情報を確認して賛同したり将来性を見据えた上で、投資対象として投資を行います。
一般的に出資者は、出資額に応じてその目的に関連したサービスや商品など提供を受けることができます。
資金提供の対価として関連サービス等を提供
実際にクラウドファンディングが成功した事例としては、
アイドルグループの新しい衣装を作りたいが資金が不足しているため、クラウドファンディングを使用して資金調達に成功したという事例があります。
このとき出資者に提供されたサービスとしては、限定ライブの参加権やボーリング大会の参加権、フォトアルバムなどがありました。
このようにクラウドファンディングは、インターネットを経由して不特定多数の人に出資を求め、資金提供者に対価として関連するサービスや商品を提供するという仕組みです。
ICOとクラウドファンディングの違い
仮想通貨を利用して、クラウドファンディングと同じように不特定多数の人に出資を求める方法というICO(イニシャル・コイン・オファーリング)という仕組みがあります。
ここでは、ICOが実際にはどのような仕組みなのか、またクラウドファンディングとの違いは何なのかを説明していきます。
仮想通貨を利用したICOとは
ICOとは、イニシャル・コイン・オファーリングの略で、仮想通貨の技術を使った資金調達の方法のことをいいます。
資金を集めたい企業や団体は、独自の仮想通貨トークンを発行・販売することで資金を集めます。
このトークンの販売はトークンセールとも呼ばれており、新たな資金調達法として注目されはじめています。
これまでの資金調達の方法としては、新株発行を行うのが一般的でした。
ICOは、株式のような議決権・配当といった対価の支払いはなく、関連するサービスや特典が提供されるため、クラウドファンディングと似ている資金調達方法とされています。
ICOとクラウドファンディングの違い
ICOとクラウドファンディングは、目的が資金調達にある点と、対価としてサービスや関連する商品などが提供される点は共通しています。
資金提供の形式
しかし、資金の提供される形式に違いがあります。
クラウドファンディングでは、実際のお金で資金が提供されますが、ICOは仮想通貨で支払いが行われます。
対価となる商品・サービスの形式
また、対価としての商品やサービスの形式にも違いがあります。
クラウドファンディングでは、資金提供の対価として、実際に行われる体験や関連する商品を提供します。
それに対しICOでは、仮想通貨のコイン・トークンや仮想通貨によって、対価が提供されます。
ICOは安全かつ自由に権利を流通させることが可能
さらに、クラウドファンディングで出資者が受けるリターンには、二重譲渡という問題があり、こちらの安全性を確保するためにはかなりの工夫やコストが必要となります。
一方、ICOにおけるリターンはトークンで提供されるため、仮想通貨のシステムを利用することで、トークン(コイン)を安全かつ自由に権利を流通させることができるという違いもあります。
ビットフライヤーが提供するファンドフライヤーとは
ICOを効果的に利用するためのプラットフォームとして、ビットフライヤーが提供するファンドフライヤーというものがあります。
出資方法には購入型と寄付型がある
プロジェクトオーナーと呼ばれる出資希望者は、ファンドフライヤー上の広告を通して、サポーターと呼ばれる出資者を募ることができます。
プロジェクトの内容については特別な制限はなく、芸術・発明品・ソフトウェア開発・イベント・防災・政治活動といった多岐に渡る内容が例として挙げられています。
ファンドフライヤーは、購入型と寄付型のいずれかで出資することができます。
長期的な関係やコミュニティ形成も可能
サポーターは、ファンドフライヤーを利用することで、サービスや体験などのギフトと呼ばれるリターンを得ることができます。
さらには、プロジェクトオーナーとの関係を築き上げて長期的な関係やコミュニティづくりをすることも可能です。
目標枚数に到達しない場合は返却される
また、プロジェクトが成功した場合に限り、プロジェクトオーナーにはビットコインが支払われます。
そして、サポーターにはギフトが提供されるという仕組みとなっています。
万が一、目標とするビットコイン数に到達しない場合には、サポーターにコインが返却されます。
出資者は様々な形で支援ができる
このような仕組みを取っているため、サポーターは資金としてのトークンの提供だけでなく、アドバイスを行うなど、様々なかたちでプロジェクトを支援することができるプラットフォームとなっています。
利用料はプロジェクトオーナーのみ発生
利用料については、資金調達が成立した場合、プロジェクトオーナーは集めた仮装通貨の10%を支払います。
サポーターは手数料無料で利用することができます。
プロジェクトオーナーとして、ファンドフライヤーをはじめる前に、サポーター登録をして実際にどのように使われているかを見てみるのもいいでしょう。
仮想通貨で投資をするクラウドファンディング『INKubator』とは
ICOを利用するためのプラットフォームとして、『INKubator』(インクベーター)というサービスも存在します。
インクベーターは、シンガポールが拠点のブロックチェーンプロジェクトInkが提供するクリエイティブコンテンツ資産取引プラットフォームとして開発されました。
独自通貨でのやり取りなど様々な機能がある
イーサリアムやInkの独自通貨であるINKでの資産調達を行い、投資者とクリエイター間では独自の仮想通貨でのやりとりが可能です。
イーサリアムの特徴的な機能として、クラウドファンディングを行うことができる機能があります。
その他にも、コンテンツを保護する機能やトークンを投資者間で取引できる取引所としての機能も備えています。
成果物も仮想通貨技術で保護できる
コンテンツを保護する機能としては、デジタルコンテンツに対して著作権登録できるタイムスタンプをつけることができます。
また、ブロックチェーンの技術を用いて著作物や制作したコンテンツを保護します。
取引所の機能としては、クラウドファンディングに参加しなくても独自のトークンを購入することが可能です。
このトークンは通常の仮想通貨のトークン同様に価値の変動を伴います。
資金提供を求める理由がクリエイティブな内容であれば、その成果物も仮想通貨技術を使って保護することができるインクベーターを使うのが良いでしょう。
資金調達をするのにICOとクラウドファンディングではどちらがおすすめ?
資金調達を行う場合に、クラウドファンディングとICOのどちらを選ぶべきかについては、その時の状況に適した方法を選ぶ事をおすすめします。
例えば、
- システムがよくわからない
- すぐに現金が必要である
といった場合は、仮装通貨から換金する必要がないクラウドファンディングを選択するのも手だと思います。
しかし、クラウドファンディングには、リターンの二重譲渡という問題があり、リターンの内容もある程度限られた範囲での提供となっていまします。
一方、ICOは前例が少ない分リスクも伴いますが、仮想通貨の技術を利用するため、より安全性の高いブロックチェーン(分散型ネットワーク)による安全かつ自由度が高いやり取りが可能となります。
ICOは今後も拡大?
ICOについては、これまで詐欺まがいの行為が横行してしまった経緯もあり、世界的にICOの規制が進んでいます。
世界各国でICO規制が進んでいる
現在では、中国や韓国ではICOが全面的に禁止されており、ロシアでも厳しい基準が制定されました。
アメリカでも証券取引所はICOが資金調達において有効な手段であることを認めながらも、コントロールが必要という見解を発表しています。
日本においては、現時点で規制やコントロールはされていませんが、何かしらの策が講じられる可能性は十分にあります。
ICOの規模は拡大している
このような意味でも、ICOを使用した資金調達を行うのは早い方がよいかもしれません。
ICOには詐欺の可能性もあるということで、投資家はICOを厳選して投資するようになってきていますが、全体の規模は拡大しています。
2018年の資金調達額は213億ドル弱に到達
資金調達額を調査した統計によると、2016年は1億ドルに満たない程度の規模でしたが、2018年は仮想通貨の価格が下落するといった状況においても、213億ドル弱に到達するまでに成長しています。
資金調達のひとつの方法としてICOは有効な手段
以上のように、仮想通貨を使用したクラウドファンディングは可能であり、仮想通貨の技術を使用するため、法定通貨を使ったクラウドファンディングよりも安全かつ自由に資金調達を行うことが可能です。
資金提供者と仲介してくれるプラットフォームや、作られた資産を守る技術のあるプラットフォームも存在していますので、ICOを使用した資金調達についても検討してみてはいかがでしょうか。